女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2021年度

大日本印刷株式会社 (製造業)

職場・チームにおける心理的安全性の構築で、仕事と介護の両立への流れを作り出す

認定マーク

企業プロフィール

設立
1876年
本社所在地
東京都新宿区
事業内容
製造業(印刷業)
従業員数
10,328名(うち女性2,248名)
企業認定・表彰等
くるみん認定、均等・両立推進企業表彰、ダイバーシティ経営企業100選 / 新・ダイバーシティ経営企業100選

取組内容

仕事と介護の両立支援

特徴的な制度・取組など

  • 専門家による個別相談会をオンラインと対面で継続的に実施。
  • 心理的安全性を高め、安心して仕事と介護が両立できる職場環境づくりに取り組む。

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インタビュー

  • 人事本部労務部第1グループ
    佐藤 工さん

取組のきっかけ・経緯
大介護時代に向けて

 当社は、10年ほど前から仕事と介護の両立支援に力を入れてきました。そのきっかけは、将来の大介護時代を迎えるにあたって、効果的な介護支援施策を講じていくことは、優秀な人材の流出防止や個人のキャリア形成の支援、ひいては企業の将来的な発展のための重要な労務課題であると考えたためです。当時は、介護に関してはプライベートな部分と考える従業員が多く、介護状況や介護ニーズが顕在化しにくい状況でした。そのため、まず、2012年8月にグループ会社内の40代以上の従業員約9,000人を対象としたアンケート調査を行いました。その結果、既に介護をしている者が一定数いること、今後5年以内に介護をすることとなる可能性が高い者が相当数いることが判明しました。また、従業員が公的介護サービスや社内の介護に関する制度を十分に理解していないこともわかりました。これらを踏まえて、従業員の仕事と介護の両立をどのように支援していくか、ニーズに則した取組を進めていく必要がありました。

具体的な取組の内容
社内制度の拡充、経済的支援、相談体制の構築

 介護休業は、通算366日まで12回を限度として分割取得を可能としており、法定より柔軟に利用できる制度となっています。また、介護休暇の日数は法定通りですが、有給扱いの特別休暇としています。さらに、当社独自の休暇制度として、ライフサポート特別休暇という制度があります。こちらは、使用条件・利用目的が決まっている特別休暇となっています。介護等の利用目的では、年次有給休暇の残数が5日以下になった場合に、直近2年間で失効した年次有給休暇を1年で30日まで取得できます。また、介護や配偶者の転勤等、やむを得ない理由で退職した従業員を、退職前と同じ処遇で再雇用する、ジョブリターン制度を導入しています。介護は個人の事情で状況が大きく異なるため、本人の就業継続の意思や会社の支援だけでは退職を防げないこともあります。そのような場合でも、介護状況の変化に応じて就業が可能となった場合には、再び当社で活躍してもらえるよう制度導入に至りました。
 次に、経済的な支援として、満18歳未満の子、孫、弟妹、要介護状態にある家族や障がいがある家族を扶養する場合に支給する次世代育成・介護支援手当、介護が必要なご家族と同居しており新幹線通勤をする場合に支給する新幹線通勤補助を導入しています。新幹線通勤補助は、通勤時間が長くなっても親と同居して介護したいとのニーズに応えたもので、介護支援に加えて従業員の健康管理の観点からも設けている制度です。
 そのほか、仕事と介護の両立はキャリアに影響することから、キャリア相談室が介護に関する個別相談会をオンラインと対面式の両方で毎月開催しています。専門のケアマネジャーに介護の進め方や生活支援サービスの取次ぎ等を家族と一緒に相談することができます。また、土曜日にも開催するなど、従業員とその家族が参加しやすいよう工夫を行っています。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
介護のための離職者減少

 仕事と介護の両立支援の成果として、介護を理由とした退職者の減少が挙げられます。2012年は自己都合退職者のうち介護を理由とした退職者は約5%で2015年まで増加傾向にありましたが、その後減少し、2016年から2020年までの5年間の平均で約2.5%となりました。また、個別相談会での相談件数が増加しており、2013年度は半期で20件程度でしたが、2019年度は半期で約60件となっています。増加の要因として、介護に関する制度や取り組みの周知や職場におけるオープンに相談し合える雰囲気が醸成されたことがあると考えています。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
さまざまな場面で介護制度に関する周知を行う

 当社では、一人ひとりがダイバーシティの一員であるという考え方のもと、日頃から介護についての知識を得ておくことが、個人のキャリア形成や組織のダイバーシティ&インクルージョン、そして職場・チームにおける心理的安全性の構築に好影響を与えると考えています。そのため、ダイバーシティに関する社内イベントをはじめ、従業員への介護に関する周知を継続して行っています。業務で会社のパソコンを使用しない工場勤務の従業員には、主に紙で案内を作成し周知していましたが、近年では個人のパソコンやスマホから会社のイントラネットの一部にアクセスできる「BYOD※」の検討を始め、社内のどの従業員にも情報が届きやすいよう、工夫を重ねています。
 また、当社の「仕事と介護の両立支援ハンドブック」は、介護の事例を、イラストを交えストーリー仕立てで介護の流れと全体像を把握できるようにして、フェーズ別の出来事に対して利用できる公的介護サービスや当社の社内制度を紹介しており、どんな時に、どの制度を使えるのか一目で分かると従業員から好評です。管理職が部下に対して介護制度の説明を行う場面でも使用でき、管理職側の意識改革にも役立っています。制度を導入し、周知し、利用しやすい環境を整え、介護のための離職者を出さないという循環を作ることが大切だと考えています。
※個人のパソコンやスマホを業務で利用するサービス。


仕事と介護の両立支援ハンドブック

今後の課題・展望
「心理的安全性」と「介護リテラシー」の向上

 今後も、職場やチームにおける信頼関係に基づく「心理的安全性」を高め、安心して仕事と介護が両立できる職場環境づくりに取り組むと同時に、予防の観点からも介護に関する情報提供の強化を図り、これから介護に直面する可能性のある従業員の介護リテラシーを上げていくことで、長期の介護休業や離職をすることなくキャリアを形成できる支援施策を拡充していきたいと考えています。

個別相談会を利用した人の声

個別相談会に参加し、専門家からのアドバイスによって、退職ありきの考えが変わった従業員もいます。



 個別相談会では、在宅勤務で介護ができるかどうか、施設を利用するか同居して介護すべきか、育児とのダブルケア、老々介護の問題等、さまざまな相談が寄せられます。介護が始まっている人、既に退職を決めてしまって退職後の収入を心配している人等、緊急性の高い状態で相談に来られる人もいます。しかし、専門家のアドバイスを受けることで、「仕事を辞めてはいけないという意識が芽生えてきた」「退職することばかり考えていたが、介護と両立できるという考えに変わった」等の声を聞いています。

(データの取材時点:2021年11月)

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