女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2019年度

株式会社TOKAIホールディングス (卸売業、小売業)

従業員アンケートでわかった介護への不安を払拭するため、必要な施策を展開

認定マーク

企業プロフィール ※2019年9月時点

設立
2011(創業1950)年
本社所在地
静岡県静岡市
事業内容
エネルギー事業、情報通信事業等、生活インフラサービス関連事業
従業員数
4,147人(うち女性790人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、プラチナくるみん認定、えるぼし(認定段階3)

取組内容

仕事と育児の両立支援仕事と介護の両立支援テレワーク再雇用制度男性育児参画

特徴的な制度・取組など

  • 失効する年休を毎年5日最大100日まで保存休暇として積み立てることができるようにしている。介護休暇と同条件で、1年につき20日まで半日又は1日単位で、利用可能な介護のための保存休暇制度を導入。
  • 要介護状態の家族がいる場合、1週間に2日までの在宅勤務が可能。
  • 仕事と介護の両立支援のための研修を静岡、東京の2か所で開催。

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インタビュー

  • TOKAIマネジメントサービス
    取締役 人事業務部長
    沼野 哲也 さん(中)

    TOKAIマネジメントサービス
    人事業務部 人事労務課 課長
    大谷 佳史 さん(右)

    TOKAIマネジメントサービス
    人事業務部 給与サービス課
    落原 崇充 さん(左)

取組のきっかけ・経緯
従業員アンケートを実施し課題を把握

 当社グループでは近年、介護も一因と考えられる離職が毎年数名出ていたことや年次有給休暇取得率や男性の育児休業取得率があまり高くなかったこと等を背景として、働きやすい職場について検討を2014年より開始しました。当時の介護離職についての現状としては管理職等の離職もあり、豊富な知見を有する管理職の離職は会社にとって非常に大きな損失でした。また会社として、 グループの介護制度や休業等を勧めて翻意させようとしても辞意を会社に伝えた時には既に意志は固まっており、慰留も難しいことから、離職を決意する前に、介護離職の現状を知識として理解することや働きながら介護に携われる制度設計をしていく必要があると考えました。
 介護における働きやすい職場の検討にあたり、まずは従業員意識を把握するため、全従業員を対象にアンケートを実施しました。その結果、介護経験がある従業員は全体の約2割であり、その2割のうち現在進行形で介護に携わっている従業員は4割にも上っておりました。そしてアンケート回答者全体の9割が介護に対して不安を抱いており、自身が介護に携わることになった場合に、仕事を続けられないと考えている人が多かったため介護と仕事を両立していけるよう会社制度の整備と情報提供の両面から取組を開始しました。

具体的な制度の内容
介護の期間を踏まえ、保存休暇の積立日数を100日まで拡張

 当社グループでは、介護休業及び介護休暇は法定通りですが、介護休暇と同様に使用できる休暇として、2015年に介護のための保存休暇制度を導入しました。これは失効する年次有給休暇を毎年5日、合計100日まで積立可能とし、介護休暇と同条件で1年につき20日まで、半日又は1日単位で有給休暇として利用可能とする制度です。導入当時は積立上限を50日としていましたが、ある調査で介護の期間は平均して4~5年であることが示されていたため、毎年20日ずつ5年間利用できるよう、2019年から積立上限を100日に増加しました。 この制度は導入当時から毎年4~6人程度の利用があります。2016年には家族の介護又は看護及び育児等の理由により退職した従業員の再雇用制度を導入しました。さらに、2017年からは、要介護状態の家族がいる従業員を対象に、会社が必要な機器等を貸与して1週間に2日に限り在宅勤務を可能としており、現在2名が在宅勤務制度を利用しています。
 従業員へのアンケートの結果、多くの従業員が仕事と介護の両立について情報が十分でないため不安を感じていたことから、2015年から仕事と介護の両立支援研修を実施しています。2015年には全管理職を対象に、介護に関する基本知識や当社グループの仕事と介護の両立支援制度について情報提供を行いました。2017年、2018年には後述する実態調査の回答から、介護に直面している、又は介護に関する知識を必要としている従業員を対象に、介護に直面した場合の仕事と介護の両立方法に関する情報提供を行い、2019年には介護の実践編として、両立に関する具体的事例や介護保険サービスの使い方等の情報提供を行いました。いずれも、静岡、東京の2か所で開催しています。
 また、2016年に介護・育児に関わる制度や申請、給付金等に関する問合せ窓口、年次有給休暇等に関する問合せ・相談窓口として、「ワークライフバランス相談窓口」を設置しています。
 あわせて、従業員の介護に関する実態を把握するため、2016年、2019年に全従業員を対象として「仕事と介護の両立」の実態調査をしており、そこで抽出された課題に対して施策を講じています。

※保存休暇制度自体は介護だけではなく、本人の傷病、子の看護等の理由でも使用は可能な制度

取組を進める上での工夫や配慮等
上司と部下の信頼関係の構築に注力

 介護を抱えている従業員が、悩んだ末に両立はできないと考えて辞意を上司に伝えた時に、初めて上司がその状況を知る、ということでは介護離職をなくすことはできません。このような離職を防ぐため、管理職には部下とのコミュニケーションをしっかり取るように伝えています。当社グループでは、毎年2回の業績評価と年1回の能力評価のタイミングで面談の機会を持つこととしています。それ以外にも日頃から上司と部下の間で積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築することで、面談の機会等でもプライベートの悩みを打ち明けやすくなると考えています。 悩みを打ち明けてくれれば、両立のための制度を伝えたり、相談窓口につなげることもできて、会社としてもサポートがしやすくなるため、管理職に対して、まずは日頃の信頼関係を築くことの重要性を伝えています。

取組による効果等
離職者が減少し、制度の認知度が向上

 介護のための保存休暇使用や在宅勤務制度等を中心に、介護関連制度の利用者は少しずつ増加傾向にあり、制度の認知度が高まり、制度を利用して両立する従業員が少しずつ増えてきていると考えています。また、ここ数年は介護を理由とする離職者が毎年数名いましたが、2019年度は9月末時点では出ておらず、継続就業に寄与していると考えています。実態調査においても、介護制度の認知度が少しずつ上がってきています。認知度がさらに向上するよう、今後も継続して情報提供を行っていきたいと思います。

今後の課題・展望
休暇を取得しやすい職場環境の醸成

 介護離職を防止するためには、本人、管理職ともに仕事と介護の両立に関する知識を有していることが求められます。さもなければ、必要になった時に必要な情報を提供できず、悩みを抱えたままになってしまいます。退職の決意をする前に、介護を抱えている状況を把握し、両立をサポートできるような仕組みづくりが重要であると考えています。
 また、当社グループはインフラ事業を中心としており、営業担当等はお客様の対応等から、休暇を取得しにくい状況があります。その状況を改善すべく、年次有給休暇の計画取得日数を5日から7日に増加して期首に取得計画を立てたり、男性の育児休業取得を促進する取組を進め、休暇を取得しやすい環境づくりを少しずつ進めているところです。これらの取組が評価され、2019年5月には当社グループの主要6社でプラチナくるみん認定を取得したところですが、仕事と介護の両立においても、休暇を取得しやすい職場環境は不可欠であるため、今後も引き続き、取組を推進します。

制度利用者の声

介護当事者の声を汲んだ制度設計が求められます

通院やケアマネジャーとの打合せ等に保存休暇を利用しました

 母がパーキンソン病にり患しており、 10 年以上前に要支援認定を受け、今は要介護認定を受けています。一人暮らしが難しくなった頃から、母を呼び寄せて自宅で同居しており、今は週 3 日程度、デイサービスを利用しています。また、介護のため、数年前に妻は仕事を辞めました。最近は、在宅での介護が厳しくなってきたことから、入居施設を検討していますが、 候補としている施設は長期で入居待ちという状況です。
 現在は自宅から勤務していますが、数年前まで単身赴任をしていたため、通院やケアマネジャーとの打合せ等のために都度赴任先から戻っており、介護のための保存休暇を利用していました。現在も、定期的な通院等の際に、介護のための保存休暇を使用しています。

介護をしながら働き続ける従業員へのより深い理解が必要

 介護を抱える人の状況はそれぞれ異なり、非常に個別性が高いため、一般的な切り口での対応のみでは、必ずしも役に立たないこともあると感じています。また、介護を抱えている状況については、介護の当事者にしかわからないことがとても多いと感じています。このため、会社が介護のための制度設計や相談対応等をする際には、介護当事者も交え、 実態を踏まえた検討をすることが望まれます。
 仕事と介護をそれぞれ100%行うことは不可能であり、誰もが何かを犠牲にしていると思います。我が家では、妻が就業を断念しましたし、私自身もいろいろなことを断念してきました。現在介護をしながら仕事を続けている従業員は、そのような中で勤務しているということをもっと理解してもらうとともに、「ダイバーシティ」の概念に、介護を抱える従業員も取り込み、さまざまな事情を抱える従業員に対して会社がもっと理解を深め、必要な配慮をすることにより、それぞれがもっと活躍できる環境が整備されることを期待します。

(データの取材時点:2019年10月)

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