女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

女性の活躍推進・両立支援総合サイトトップ > 女性活躍・両立支援事例集トップ(事例検索) > 企業事例

2019年度

株式会社マイシン (運輸業、郵便業)

「仕事に人を合わせる」から「人に仕事を合わせる」へ発想の転換を図る

認定マーク

企業プロフィール

設立
1979年
本社所在地
愛知県豊橋市
事業内容
運輸業(一般貨物自動車運送業)
従業員数
183人(うち女性50人)
企業認定・表彰等

取組内容

女性活躍推進女性採用拡大女性職域拡大女性管理職登用

特徴的な制度・取組など

  • 育児と両立できる時間帯の仕事を創出するため、配送の時間指定が可能なお客様の獲得に取り組む。
  • 未経験者を育成するための体系的な研修制度の導入。
  • インフルエンザの予防接種を、従業員の扶養家族全員分、全額を会社負担とする。
取組事例ダウンロード 

インタビュー

  • 代表取締役社長
    辻 直樹 さん(右)

    総務部 課長
    山田 真理子 さん(左)

取組のきっかけ・経緯
一人の女性ドライバーの入社をきっかけに採用方針の転換へ

 2014年頃から運輸業界全体に人手不足が深刻化し、当社でも、仕事量の増加に対してドライバーの数が追い付かない状況にありました。そんな中、育児との両立を図りたいという理由で、平日の8時から17時までの勤務を希望する、未経験の女性からドライバー職への応募がありました。 それまでの当社ドライバーの採用基準では、早朝や夕方以降の勤務ができないドライバーは勤務シフトに組み入れることが難しいため不採用としていたのですが、彼女の仕事への意欲が高かったことと、人手不足に悩んでいたこともあり、採用してみることにしました。入社後は、勤務時間への配慮が必要であること以外は男性ドライバーと遜色なく、女性ならではの細やかな気配りや応対がお客様に喜ばれ、高い成果を上げました。このことから、それまでの「仕事に人を合わせる」という採用方針から、「人に仕事を合わせる」採用方針に発想転換し、新たな戦力として、積極的に女性ドライバーの採用を行うようになりました。

具体的な制度の内容
勤務時間に制約のある女性ドライバーの仕事を創出

 女性ドライバーの積極採用の取組として、採用の場面では、電話対応から面接、手続きまでを女性担当者が実施し、応募者に安心感を持ってもらうようにしています。また、「自動車運転者の労働時間などの改善のための基準(通称、改善基準)」について、男女問わず、採用面接で丁寧に説明し、入社後のギャップが生じないようにしています。
 女性ドライバーが働きやすい環境づくりの取組としては、勤務時間に制約のある女性ドライバーの仕事を創出するため、配送の時間指定を受け入れてくださるお客様の獲得に全社で 注力しました。子どもの病気等による急な休みへの対策としては、どのコースも二人以上のドライバーが対応できるようにし、インフルエンザの予防接種を、従業員の扶養家族全員分、全額を会社負担としています。また、女性ドライバーが重い荷物を扱う場合には、荷物の選別や荷降ろしの応援体制を組む等の工夫も実施しました。ただ、実際に検証してみると、女性は抱えにくいベッドマットレスのような大きな荷物の運搬を不得手としていますが、重い荷物の運搬は大きな問題ではないことがわかりました。
 そのほか、以前は現場主体で行っていた新入社員の教育について、研修を専門に担当する「管理部」を立ち上げ、体系的に実施することにしました。業務に必要な知識や経営方針を伝える座学と、積荷や運転の実技を組み合わせたプログラムを作成し、未経験者を採用しても育成できる体制を整えています。業務に必要な資格を取得する際は、給与をカットすることなく、勤務を早く切り上げ教習所に通うことができるほか、総務部の担当者が手続きをサポートしています。また、資格取得にかかる費用を会社から無利息で貸し付ける制度もあります。育児が落ち着き、時間の制約がなくなった女性ドライバーに対しては、働き方の幅を広げられるよう、大型免許取得や長距離ルートへのチャレンジの支援も行っています。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
女性ドライバーの増加にともない、売上も増加

 女性ドライバーの積極採用によって、当社のドライバー数は年々増加し、2019年時点ではドライバーの25%を女性が占めるようになりました。また、売上についても、取組開始から5年間で約4億円増となっています。採用した女性ドライバーを活かすため、運行計画を綿密に見直したことで、改善すべき点が明らかになりました。結果として、不良運行の減少や労働時間の削減につながり、 経営体質の強化が図れたと考えています。また、勤務時間に制約のある女性ドライバーは、定時に退社できるよう会社から近い地域を担当することが多いため、必然的に本社のある東三河地区で、当社の配送トラック「ひまわり便」の女性ドライバー比率が高まります。町のあちこちで女性ドライバーを見かけることにより、「私にもできるかもしれない」と考える女性からの応募が増え、労働力確保につながるという好循環が生まれました。そして、経験を積んだ女性ドライバーの中から、リーダーやサブリーダーを担う人材が出てきており、女性ドライバーのロールモデルとして活躍しています。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
子どもの体調については早めの情報共有で、運行計画に影響が出ないよう工夫しています

 運送業では、決められた日時にお客様に荷物を届けることが何より大切なため、ドライバーの予定外の休みで運行計画を変更せざるを得ないことがとても困ります。一方で、小さい子どもが急に体調を崩すのはよくあることです。そこで、子どもの体調がすぐれない場合には、できるだけ早く上司や配車係と情報共有をするよう、ドライバーに協力を求めています。その点において、女性のリーダーは、チームメンバーの家族構成やどこの地域で インフルエンザが流行っているというような情報を持っていて、「お子さんの体調はどう?」など早めに状況を把握してくれるので、助かっています。チームメンバーも困った時には遠慮なく相談でき、社内に良い雰囲気を作り出しています。また、当社は未経験者の採用も多いため、従業員教育を大切にしています。安全への意識や、お客様サービス、自社の経営理念について従業員一人ひとりに理解してもらうため、経営理念や年間の売上目標が記載されたハンドブックを従業員全員に配布しています。従業員全員が共通認識を持つために、全員が正社員雇用であることは大きな意味があると考えています。

今後の課題・展望
女性ドライバー活躍のトップランナーとして、広く「トラガール」支援に携わりたい

 積極的な女性ドライバーの採用開始から5年が経過し、本社では女性ドライバーの増加が売上につながるという望ましい成果が出ています。しかし、ここにたどり着くまでには、女性ドライバーの数と仕事量のバランスがとれず、売上が停滞する期間もありました。当社の浜松営業所では、今まさに本社で経験した、 人員の増加に仕事量が追い付かない時期を迎えていますが、本社のノウハウを活かし、女性ドライバーの能力を活かせるよう取組を継続していきたいと思っています。
 一般的には、ドライバーは男性の仕事とまだまだ考えられています。しかし、ドライバーの仕事は、お客様への対応等、女性ならではの長所を活かせる場面が多くあります。また、男女で賃金の差がなく、経済的に自立できる収入を得ることができる仕事です。国も「トラガール」と称して、女性ドライバーの活躍支援を行っていますが、当社では女性ドライバー活躍のトップランナーとして、今後も広く女性活躍推進に携わっていきたいと考えています。

女性従業員の声制度利用者の声画像

多くの女性にトラックドライバーの仕事の魅力を伝えたい

一般部 配車課リーダー
鈴木 祐子さん

充実した研修や丁寧な指導のおかげで、未経験でも安心してひとり立ちできました

 私は2015年にトラックドライバーとして入社しました。ハローワークで希望条件を伝えたところ、育児と両立できる時間帯での勤務であることや、フォークリフト免許やAT限定解除等、必要な資格を働きながら取得できるところに魅かれ入社を決めました。入社後は座学を含めた研修プログラムを受講し、横乗り期間には 先輩が丁寧に指導してくださったおかげで、安心してひとり立ちすることができました。一人で荷降ろしをすることが難しい大きな荷物を運ぶ場合には、男性ドライバーが応援に来られるよう運行計画を組んでもらったこともありがたかったです。ドライバーの仕事は本当に楽しく、お客様に喜んでいただいた時には、「この仕事を選んで良かった」と思うことがしばしばありました。
 ドライバーを約3年経験した後、現在は配車係を担当しています。配車係は、運行計画の作成や積み荷の割り振りをする仕事です。ドライバーの安全や働きやすさを考慮しながら、会社の売上目標の達成を目指すという点で難しい仕事ですが、経験を活かしつつ新しいチャレンジをしています。また、チームリーダーも担っています。チームリーダーは、無事故徹底のため、メンバーへのルール遵守の意識づけを行ったり、構内を巡回して荷物の積み方や輪留め使用の徹底等、技術的な指導を行います。リーダーを打診された時は不安もありましたが、同僚や後輩のため、働きやすい職場をつくりたいという思いで引き受けました。チームのメンバーに、日々助けてもらいながら役割を果たしています。

同僚や後輩を助けてあげられる存在になりたい

 当社の女性活躍推進の取組が注目されたことをきっかけに、全国や愛知県の女性ドライバー活躍推進の活動に携わるようになりました。多くの女性にトラックドライバーの仕事の魅力を伝え、経営者の方には女性もトラックドライバーとして活躍できることを伝えたいと思っています。また、この活動を通じてお会いする女性はパワフルな方々が多く、刺激を受けることも度々あります。私もさらに経験を積み、後輩が困った時には助けてあげられる存在になりたいです。

(データの取材時点:2019年10月)

PAGE TOP