女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2016年度

平成28年度 均等・両立推進企業表彰
厚生労働大臣優良賞 ファミリー・フレンドリー企業部門

社会医療法人 明和会医療福祉センター (医療、福祉)

多様な勤務ステップにより、各人のライフスタイルに合った働き方を選択可能
夜勤・土日祝日勤務の職員を確保するため、報酬ポイントやインセンティブにより、
すべての職員が納得感を持って勤務できるよう配慮

認定マーク

企業プロフィール

設立
1953年
本社所在地
鳥取県鳥取市
事業内容
病院、認知症グループホーム、障害者地域生活支援センター/グループホーム
従業員数
700人(うち女性474人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、均等・両立推進企業表彰

取組内容

仕事と育児の両立支援仕事と介護の両立支援短時間正社員制度

特徴的な制度・取組など

  • 多様な勤務ステップにより、各人のライフスタイルに合った働き方を選択可能。
  • 夜勤・土日祝日勤務の職員を確保するため、報酬ポイントやインセンティブにより、すべての職員が納得感を持って勤務できるよう配慮

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取組の背景と経緯

 同法人は鳥取市内に複数の医療機関や福祉施設を展開しています。病院は「365日24時間体制」が一般的であるため職員の確保と定着が難しく、ワーク・ライフ・バランスの実現が難しい業態であると言われています。 しかし、同法人では10年以上前からワーク・ライフ・バランスを重要な経営課題として捉え、医師、看護師をはじめとする全ての職種が満足して働くことができ、職場に定着できるよう、育児・介護休業について法定を上回る基準で就業規則を整備することから取組を開始しました。しかし、制度の整備にあたって、制度を利用する職員と制度を利用しない職員の間で不平等感が生まれないように工夫する必要がありました。そこで同法人では、7段階の勤務ステップを設定し、職員がライフスタイルに合わせて自らの意思で勤務ペースの上げ下げを選択できるようにしました。また、仕事と育児・介護の両立が必要な職員の中には、短時間で働くよりも勤務日数を少なくする方が、さまざまな家庭の事情や急な用事に対応できるとの声があり、週休3日で働くことのできる「短時間正職員制度」を導入しています。このようなワーク・ライフ・バランスの実現に向けた制度に加え、近年では男性職員の育児休業取得促進についても、病院内に啓発ポスターを掲示したり、職員同士のコミュニケーションを促す等、積極的に取組を進めています。男性職員の育児休業取得を促進した結果、育児休業経験のある先輩職員を見て若手の職員も同様に育児休業を取得するようになり、徐々に職場の雰囲気が変わってきています。

両立支援のための具体的な取組内容

育児関連制度

 育児休業制度は、原則として子が1歳に達するまで取得可能で、事情により復帰が難しい場合には、最大満3歳に達するまで延長可能です。平成27年度の育児休業取得者は、男性が29%、女性が100%であり、男性の平均休業日数は39.5日でした。育児短時間勤務制度は子が小学校就学始期に達するまで利用可能で、勤務時間は原則として6時間以上となっており、15分単位で取得可能です。

介護関連制度

 介護休業制度は、対象家族1人につき、通算で180日取得することができます。直近3年間で2名の職員が取得しており、復職率は100%です。

その他の取組等1

 同法人では、すべての職員が仕事にやりがいを感じながら患者に向き合うことができるように、職員の「働きやすさ」と「働きがい」を追求してきました。医師、看護師等、全ての職員が事由を問わず、 「平日日勤のみ」や「夜勤日数制限あり」等、それぞれのライフステージに合わせて勤務ステップを選択することができる7段階の勤務ステップ(表1)を導入しています。原則として毎年1回、各職員が勤務ステップを選択する形としていますが、突発的なライフイベント等が生じることもあるため、要望があれば期中での勤務ステップの変更も認めています。
 同法人では、この制度を円滑に運用するため、あわせて「報酬ポイント選択制度」を導入しています。これは、「夜勤をしない」 「土日祝日を休む」等の権利を「報酬ポイント」として、年度初めにすべての職員に一定数のポイントを付与し、それぞれの権利を行使する場合にそのポイントを利用する制度です。土日祝日勤務や夜勤等を担当して確保したポイントは、賞与と昇給率に反映される仕組みとなっています。さらに、夜勤や土日祝日勤務を多く担当する職員に対しては賞与を加算する仕組みも導入しています。これらの勤務ステップと報酬ポイント制度等を導入したことにより、育児休業を取得した職員が、比較的早い段階で休業前に近い勤務体系に戻ってくれるようになりました。また、勤務体系を少しずつ調整できることにより、ステップアップとステップダウンを柔軟に選択する職員が増えました。このような制度の導入により、それぞれが自分の仕事にやりがいを持って働くことができ、働く時間に制約のある職員の中からも昇格者が多く誕生しています。
 これらワーク・ライフ・バランスの実現に向けた制度を整備したことで、過去10年は育児を理由とする退職者は出ておらず、看護師および介護福祉士の離職率は全国平均と比べて低くなっています。また、職員を対象にした満足度調査(日本看護協会 ワークライフバランスインデックス調査)においても、「職員を大切にする組織である」や「できるだけ長く勤めたい」といった項目で全国の平均を大きく上回る結果となりました。

表1 7段階の勤務ステップ

※短時間正職員が夜間や土日勤務を選択すれば上位Stepとして取扱う

その他の取組等2

 同法人では、育児や介護等のライフイベントや、年齢等により、管理職という職責を重く感じてしまう職員の精神的な負担を軽減するために、自らの申し出により、円滑に職位を降りる権利を認めています。たとえ職位を降りたとしても、再度管理職に挑戦できる権利も同時に認めており、再挑戦してもらう職員を公平に評価するため、場合によっては「飛び級」をする等の調整をして、納得のいく形で職場に復帰してもらうような措置を設けています。

取組上の課題等

 同法人のワーク・ライフ・バランスを支える7段階の勤務ステップは、国の診療報酬制度で規定されている人員配置基準より10%程度多く職員を確保し、職員の急な欠員に対応できるようにすることで成り立っています。 よって、この制度を維持するためには継続的な人員の確保と定着が一番の課題です。また7段階の勤務ステップのバランスを維持するために、人事担当者は各勤務ステップの人員割合を随時細かく確認し、全職員に対して定期的に割合と制度を維持するために各ステップに必要な人員数を公表することにより、最適な比率を検討しながら運用することが必要です。そのため職員間の「お互い様」の意識だけではなく、各職員にこのワーク・ライフ・バランスの実現に向けた制度を十分に理解してもらい、日々、お互いの権利を調整するシステムとして機能する工夫をしています。

今後の展望

 今後も両立支援制度については法定を上回る基準で制度を導入していく予定ですが、就業規則で規定できる制度には限度があるため、全職員が働きがいを持って活躍できるように「柔軟な働き方」について引き続き取組を進めていきます。そして、若い職員から年配の職員までがいきいきと働き、患者に親身に寄り添う「人にやさしい」医療福祉機関を目指していきます。

受賞企業のコメント

理事長
渡辺 憲

 病院は労働者の女性比率がとても高く、出産・育児への配慮が強く求められる一方で、24時間の勤務体制も欠かせない職場です。少人数で多くの患者を担当する夜間・休日の勤務者確保が必須のテーマとなるため、 経営戦略として組織全体で取り組まない限り、均等・両立を成功し続けることは難しい、と考えました。当法人の取組は、法令の基準に拘ることなく、働く人の目線で制度を拡充していくのと同時に、その制度を維持するために必要な条件(収入目標や必要な夜勤人員等)を提示するという、やさしさと責任が同居したものです。制度を使わない人を含む職員全員の満足を目指した取組で受賞でき、とても大きな勇気をいただきました。労使がWIN-WINの関係を継続できるよう、今後も、法人の理念「人にやさしい」取組の深化に努めます。

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