女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2016年度

平成28年度 均等・両立推進企業表彰
厚生労働大臣優良賞 均等推進企業部門

塩野義製薬株式会社 (製造業)

従業員による自律的な活動を通じて、本部(職種)ごとに特有の課題を抽出し
取り組んだ結果、女性の定着が進み、女性管理職が増加

認定マーク

企業プロフィール

設立
1878年
本社所在地
大阪府大阪市
事業内容
医薬品、臨床検査薬・機器などの製造・販売
従業員数
4,467人(うち女性1,302人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、均等・両立推進企業表彰、ダイバーシティ経営企業100選 / 新・ダイバーシティ経営企業100選

取組内容

仕事と育児の両立支援女性活躍推進女性職域拡大女性管理職登用

特徴的な制度・取組など

  • 従業員による自律的な活動を通じて、本部(職種)ごとに特有の課題を抽出し取り組んだ結果、女性の定着が進み、女性管理職が増加

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取組の背景と経緯

 同社は、創業139年を迎えた医薬品メーカーです。平成26年の中期経営計画において「創薬型製薬企業として成長する」というビジョンを発表し、「人が競争力の源泉」という人材育成理念のもと、グローバルな競争に勝ち抜ける強い個人の育成と組織の構築を目指してきました。 同社では全社的にみて従業員の平均年齢や平均勤続年数に男女差は見られませんでした。しかし、本当に女性が活躍できる環境が整っているのかを深掘りした結果、職種によってさまざまな問題が発生していることが見えてきました。例えば、医薬事業本部では、平成12年頃から本格的に女性の医薬情報担当者(MR)の採用を開始していますが、全国転勤を前提とした職種であるため、結婚や出産を機に退職をする女性従業員が多く、大きな問題となっていました。また医薬研究本部では、日常的に化学物質を取り扱うために母性保護の観点から、女性研究員が妊娠すると異動せざるを得ないことや、産前産後休業や育児休業等の長期休業取得により、日々更新される医薬品開発の最新情報をキャッチアップできず業務に追いつくことが難しくなるといったことが問題となっていました。このように本部毎で抱える問題が異なることが確認できたため、ダイバーシティ(女性活躍)の推進を全社一律ではなく、各本部にワーキンググループを設置し、本部ごとの取組を展開しています。このボトムアップの取組に加え、全社的な取組として、各本部長から構成される人事委員会(座長は社長)では、「女性活躍推進」を重要テーマの一つとして、管理職候補となる女性従業員の登用等についても議論しています。

女性の活躍推進(ポジティブ・アクション)のための具体的な取組内容

職域拡大

 医薬事業本部の医薬情報担当者(MR)は全国転勤を前提としています。ただ、女性MRは結婚や出産等のライフイベントを経験すると全国転勤が困難になることもあり、他本部と比較して離職率が高いことが問題となっていました。そこで、医薬事業本部のワーキングチームが中心となり、 制度の見直しを行うことにしました。結婚時に配偶者と同居できていない場合に同居可能な勤務地へと異動できる「結婚時勤務地希望制度」の条件の緩和と、結婚時の勤務地で配偶者と同居している場合に、一定期間、転居を伴う異動の対象外となる「営業職結婚時同居サポート制度」、育児中は地域を限定した勤務を希望できる「営業職育児者サポート制度」の新設により、働き続けたい女性従業員の継続就業に対する不安を取り除き、働きやすい職場環境を本部主導で整備しました。この制度のおかげで、MRとして働く女性従業員の離職率が改善し、医薬事業本部で活躍する女性の割合が増加しています。

管理職登用

 同社では、「平成32年度までに、幹部職(マネジャー)に占める女性比率を10%以上にすること」を目標として、女性従業員の育成をしています。その取組の一つとして、医薬事業本部では、平成24年度から全国の女性MRを対象とした “Female Conference”を開催し、女性がキャリアについて自律的に考える場としました。 この “FemaleConference”は、社長を含めた経営トップも終日参加し、会社として多様な人材の活用を推進する姿勢を強力に発信することで、女性MRだけではなく、営業所長等の現場マネジャーの意識改革にも結びついています。また全社的には各本部長が出席する人事委員会において、昇格前女性リストおよび経営幹部候補リストを確認し、女性従業員に経営塾や社長塾等の育成の場へ積極的に参加してもらうことや、育成のために少し難易度の高い業務を与えることで女性の登用を進めた結果、係長クラスの女性が、平成26年度と28年度を比較し17.6%から21.0%まで増加し、課長クラスの女性も5.9%から8.5%まで増加しました。

女性従業員に対する意識改革

 同社では女性従業員の意識改革を目指し、“FemaleConference”だけでなくさまざまな取組を展開しています。例えば、医薬研究本部では、本部員に対して女性の活躍に関する意識調査を実施、女性従業員とその上司等の昇進に対する意識の現状を把握し公表することで、マネジャーの意識改革を進めています。
  このような各本部の取組は、具体的な成果として表れてきています。医薬事業本部では、睫毛貧毛症治療薬の情報提供において、「あまおうプロジェクト」という女性のプロジェクトチームが福岡県で自発的に立ち上がりました。このプロジェクトは、まつ毛の疾患という男性にはわかりにくい悩みに対して、女性が主体的に解決策を医療関係者へ周知するといった、新たな情報提供のスタイルを創出しています。その他にも、総合ビタミン剤の売上の一部と従業員からの寄付を発展途上国の母子健康増進に役立てる“Mother to Mother”というCSRプロジェクトも女性従業員の企画によって立ち上がり全社に広がっています。このように、「働きやすさ」と「働きがい」の両側面で女性活躍推進の取組を進めてきた結果、女性従業員の意識が確実に変化し、次期マネジャー研修においても受講者の女性比率が平成25年度は14.1%だったものが、平成28年度には20%に上昇し、次世代を担う女性従業員の育成も着実に進んでいます。

取組上の課題等

 近年は女性活躍推進の取組の成果が見えるようになってきましたが、医薬研究本部のアンケート結果では、マネジャー以上に昇進を望んでいる男性が60%以上いるのに対して、女性は15%と、女性の意識改革は進んでいる ものの依然としてキャリア形成に対する意識の違いが大きいことが課題として残っています。また、同社にはまだロールモデルとなる女性マネジャーが少ないことも課題です。さらに、これまで営業職勤務地希望制度等の離職対策を実施してきたものの、働きがいという点で、十分な環境が整っているとは言えない状況です。今後も女性活躍に向けたさらなる努力の必要があると考えています。

今後の展望

 医薬情報担当者(MR)については女性従業員の離職率が下がり、定着が着実に進んできているものの、管理職層の女性は、まだ少ない状況です。ただ、数字ばかりを追うのではなく、 丁寧に一つひとつ課題に取り組む予定です。また、本部ごとの取組に加えて、全社的な目線で、誰をどのように育成するかという具体的な議論を人事委員会等の場で実施していきます。そして、今後は男女という性別だけではなく、多様な価値観を共有することが重要だと考えています。従業員一人ひとりの強みを活かし、組織としてのイノベーションにつなげることで、創薬型の製薬企業としてより一層の成長を目指します。

受賞企業のコメント

 均等・両立推進企業表彰に応募することにより、自社の取組について再整理でき、更にヒアリングやシンポジウムを通じて自社の女性活躍推進の強みや目指す姿を改めて認識することができました。 そして、厚生労働大臣優良賞をいただけたことは、中心となって活動してきたメンバーの喜びとなったことはもちろん、シオノギに勤める従業員にとって誇らしいことであり、自社へのロイヤリティーが増しました。
 「一人ひとりの能力を最大限に活かしたい」ということは、どの会社においてもいえることです。しかし、抱えている課題は各社各様であるため、他社での成功事例を参考に自社の場合はどうか?と考え、カスタマイズすることが重要になります。環境変化が激しい中、自社の課題は何か?を見極め、試行錯誤を重ねながら、引き続き、一人ひとりが強みを生かし、仕事の中で自分らしさを発揮できる会社を目指します。

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