女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2024年度

EY Japan株式会社 (サービス業(他に分類されないもの))

介護に関する従業員の不安を軽減し、将来の介護離職を防ぐ

認定マーク

企業プロフィール

設立
2010年
本社所在地
東京都千代田区
事業内容
サービス業(日本国内のEYメンバーファームに向け、総務、経理、調達、IT、広報・ブランディング、マーケティング、人事、不動産業務、リスク管理等の業務を提供)
従業員数
非公開 (うち女性 非公開)
企業認定・表彰等
えるぼし(認定段階3)

取組内容

仕事と介護の両立支援 テレワーク フレックスタイム制 短時間正社員制度

特徴的な制度・取組など

  • 介護セミナーで幅広い年代の従業員に情報を提供
  • 仕事と介護の両立に関する情報を集約したパンフレットを作成
  • 柔軟な働き方の実現により介護離職を防ぐ

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インタビュー

  • Talent DE&I
    三國 左千子さん

取組のきっかけ・経緯
両立支援制度の更なる拡充を目指して

 EY Japanのメンバーファームでは、2018年から各社のオペレーションを統一化する方針があり、その一環でメンバーファーム全体のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)を推進するチームが発足しました。そうした中、仕事と育児の両立だけではなく、さまざまな従業員の個人生活とキャリアの両立支援の更なる拡充に取り組むべく、仕事と介護の両立支援に注力することになりました。

具体的な取組の内容

介護セミナーにより介護を自分事として学ぶ機会を提供

 当社の従業員の平均年齢は36歳と比較的若いですが、すでに育児と介護が同時進行している従業員もいて、同様な人はこれから増えてくるだろうと想定しています。そこで、介護に関する啓発活動の一環として、また、従業員が介護に関してどのような支援を必要としているのか生の声を拾うために、オンライン介護セミナーを2020年5月に初めて開催しました。セミナーは録画してビデオ配信も行いましたが、200人近くの従業員が参加し、大盛況でした。参加者の年代は40代と50代が多かったものの、20代や30代の参加もあり、質疑応答の時間やセミナー後のアンケート結果を通して、仕事と介護の両立について不安を感じている従業員が多いことが分かりました。

 介護セミナーは毎年1回開催していますが、当社は男性従業員の割合が高いため、男性従業員に自分事として介護について学んでほしいと考え、講師は、実際に介護経験者であり介護の専門職をされている男性に依頼しています。これまでのセミナーでは、ケアマネージャーの役割やケアマネージャーへの依頼方法など一般的な介護の話のほか、介護費用や遠隔地の親の介護など具体的な事例も多く取り上げられています。

 介護セミナーには毎回多くの参加申込みがあり、参加者の中にはリピーターもいて、従業員の介護への関心が高いことがよく分かります。会社としては介護セミナーを開催して終わりではなく、事後アンケートから従業員のニーズを拾い上げたいと考えています。


介護関連情報を集約したガイドブックを作成して従業員の不安軽減へ

 当社では介護セミナーを通じ、従業員が定期的に介護について学ぶ機会を設けています。2021年には介護関連情報を集約したガイドブックを作成し、従業員がいつでも必要な時に確認できるよう、ほかの両立支援制度に関する情報と同様に、会社のイントラネットに掲載しています。また、ガイドブックの内容を理解してもらうために、ガイドブック解説セミナーも開催しました。

 このガイドブックには、仕事と介護を両立するために利用できる制度の紹介や介護休業給付金の説明などに加えて、高齢者の介護だけではなく、子どもや配偶者の介護が必要な従業員も想定してケース別に情報を掲載しています。また、介護をする従業員の上司が心得ておくこと、応援できることに関するセクションも設けました。

 なお、当社では「違い」をうまく活用するインクルーシブネスを重視していますので、介護に直面している従業員を含め、多様な従業員が自分らしく働ける職場環境づくりを進めたいと考えており、同性婚・事実婚のパートナーはもちろん、同性婚・事実婚のパートナーの親も介護の対象家族としています。ガイドブックでは、さまざまな介護のケースを想定しながら、離職せずに仕事と介護を両立できる制度があることを従業員に周知し、介護セミナーと併せて、従業員の介護に関する不安軽減につなげたいと考えています。


柔軟な働き方を実現して仕事と介護の両立を積極的に支援

 当社には、働く場所と時間の柔軟性を上げるための制度として、在宅勤務を含むリモート勤務制度、コアなしフレックスタイム、フレキシブルワークプログラムなどがあり、従業員が個人の状況に合わせた働き方を選択できるようにしています。

 リモート勤務は顧客との契約により勤務場所が指定されている場合を除き、自宅、ホテル・旅館等の宿泊施設の個室、実家での勤務が可能な制度で、コアなしフレックスタイムは自らの判断で複数の勤務パターンから執務時間を選択できる制度(7:00から19:00まで、標準労働時間7時間、最低労働時間3時間30分)です。

 フレキシブルワークプログラムとは、育児、介護、障がいなどの理由がある場合に以下の働き方が認められる制度で、フレックス勤務との併用も可能です。

①時間外勤務、休日出勤の免除

②短時間勤務(1日の勤務時間を30分単位で5時間以上7時間未満に短縮可能)

③所定勤務日数の低減(1週間の勤務日数を3日又は4日に低減可能)

 当社の介護休業制度は、対象家族1人に対して1回の申請で原則1年まで取得可能で、フレキシブルワークプログラムと併用し、通算5年まで利用することができます。

 また、当社には時間単位で年間35時間まで有給休暇が取れる中抜け制度(9:15から17:15の間1時間単位で取得可能、35時間以上は無給)があり、子育てや介護をしている従業員に大変好評です。

 このように、当社では仕事と介護の両立を支援するさまざまな制度の整備に取り組んでいますので、介護休業は介護のために休むというよりも介護の体制を整えてもらうための準備時間だということを従業員に伝え、介護離職を防ぎたいと考えています。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
介護セミナーで従業員の不安を軽減

 介護セミナーの事後アンケートでは参加者の満足度が高いことが分かったほか、実体験に基づく講師のアドバイスが参考になったという声が多く聞かれました。また、セミナーでは介護に関するリアルな話をする一方で、参加者の安心につながる内容や介護中に幸せを感じることなど、明るい講師が前向きなトーンで希望のある話を取り入れている点も好評で、介護セミナーが従業員の介護に対する不安を軽減する良い機会になっているのではないかと思います。

今後の課題・展望
制度とカルチャー両面での充実を図る

 介護セミナーや介護に関するガイドブックの作成など介護についての啓発活動に取り組む中で、社内にヤングケアラーの存在も確認しました。幅広い年代の従業員が介護の問題に直面してもキャリア形成を継続できるよう、今後も引き続き、仕事と介護の両立支援を積極的に行っていきます。また、今後は障がい者、妊活、治療と仕事の両立など、介護に限らずさまざまなテーマで幅広く利用可能な制度を整備し、多様な要望に柔軟に対応できたらと考えています。さらに、制度面の整備に加えて、仕事と介護の両立を会社の風土としても支援するようなカルチャーの形成も進めていきたいです。

従業員の声 制度利用者の声画像

仕事と介護の両立を実践し、
誰もが使いやすい制度設計に活かす

Talent DE&I リーダー
梅田 恵さん

D&I推進に長年取り組み、介護の当事者に

 私はD&I推進を専門職として15年以上担当しており、多様な従業員を対象とした人事制度の設計と運用に携わってきました。

 2019年にEY Japanに入社してからは、インクルーシブネスを企業文化として重視する社風の下、多様な従業員が自分らしい選択をしながら働くことを支援する職場環境の整備に取り組んでいます。

 当社では2019年から仕事と介護の両立支援に注力していますが、従業員の平均年齢が36歳と比較的若く、介護のために休む制度を充実させるよりも、まずは介護に対する不安を軽減するための取組を進めることが大事であると考え、介護セミナーなどを通して介護に関する啓発活動を行っています。また、前職の経験から、人事制度の対象者を細分化すると、意外にも当事者が制度を利用しづらいことがあるため、両立支援制度については可能な限りユニバーサルな制度設計を意識しています。

 そうした中、コロナ禍となり、当初は短期間のつもりで2020年4月から実家での両親との同居がスタートしたのですが、同年9月の母親の膝の人工関節の手術を機に、私自身が介護の当事者になりました。その後、2021年3月には実家での在宅勤務中に父親が倒れて緊急入院し、同年4月からは父親の在宅介護がスタートしました。


仕事と介護を両立する当事者としての経験を活かす

 現在、私は介護休業を取得せず、基本的に在宅勤務と中抜け制度を活用しながら仕事と介護を両立しています。具体的には、平均週に2日程度のオフィス勤務以外は在宅勤務をしていて、在宅勤務中に中抜け制度を利用して親の病院への付き添いやリハビリのお迎え、訪問看護や訪問診療の対応等を行っています。実際に介護を経験してみると、リハビリ施設へのお迎えや訪問看護・訪問診療の対応だけであれば、半日休暇や1日の休暇は必要ないので、中抜け制度はとても役に立っています。

 仕事と介護を両立するうえで意識していることとしては、周囲に過度に気を遣わせないよう、チームメンバーにスケジュールを共有し、何曜日のこの時間は親の通院の付き添いで不在にするけれど、ほかの時間であれば対応可能ということを伝えています。

 私自身これまで介護に関して従業員への啓発活動をしてきましたが、実際に当事者になってみると、介護に直面して初めて分かることも多くありました。例えば、ケアマネージャーは介護する側の家族を応援してくれる人もいますが、そうでない人もいます。医師等の介護・医療従事者によっては、家族が仕事と介護を両立する必要があることを全く想像していないケースもあります。また、仕事と介護の両立は大変だろうと想像する方も多いと思いますが、実際にやってみると、仕事のお陰で気持ちの切り替えができることを実感しています。

 今後は、仕事と介護を両立している当事者としての経験を当社の制度設計に活かすとともに、介護についてより気軽に話せる職場環境の整備や、介護をテーマとした社内のコミュニティづくりなどにも取り組んでみたいと思っています。

(データの取材時点:2024年11月)

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