女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2024年度

東日本旅客鉄道株式会社 (運輸業、郵便業)

障がいや難病のある子どもを育てる従業員の仕事と育児の両立を支援

認定マーク

企業プロフィール

設立
1987年
本社所在地
東京都渋谷区
事業内容
運輸業、郵便業
従業員数
44,570人 (うち女性 8,580人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、えるぼし(認定段階3)、均等・両立推進企業表彰、ダイバーシティ経営企業100選 / 新・ダイバーシティ経営企業100選

取組内容

仕事と介護の両立支援 短時間正社員制度

特徴的な制度・取組など

  • 障がいや難病のある子どもを育てる従業員が子どもの年齢を問わず利用できる短時間勤務制度、短日数勤務制度、養育休暇制度
  • 子どもの障がい・難病の有無にかかわらず、従業員の仕事と家庭の両立を支援

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インタビュー

  • 人財戦略部 人財育成ユニット
    マネージャー(取材当時)
    滝沢 雅子さん
    人財戦略部
    健康経営・勤労ユニット
    マネージャー
    野平 敏之さん

取組のきっかけ・経緯
従業員一人ひとりが力を発揮できる環境をつくる

 当社では、さまざまな状況にある従業員それぞれが働きやすく、力を発揮できる環境の整備に力を入れています。経営幹部が従業員と意見交換をする機会を多く設けており、そこで挙がった従業員の声などを参考にし、社内の制度の見直しを行ってきました。

 当社には仕事と両立して育児や介護をする従業員が多くいますが、この意見交換の中で、障がいや難病のある子どもを育てる従業員の仕事と育児の両立に関する課題が挙がりました。障がいや難病のある子どもの育児は困難も多く、そういった子どもを持つ従業員にも、育児と両立して仕事を続けてもらうことが重要であると考え、取組みを進めることにしました。

具体的な取組の内容

制度の利用により、柔軟な働き方が可能に

 障がいや難病のある子どもを育てる従業員の育児と仕事の両立支援として、次の制度を設けています。

 ※下記の勤務、休暇制度は取材当時(2024年9月)の情報です。2025年4月1日より、更なる両立支援に関する制度の改正を予定しています。
【参考】仕事と育児・介護の両立支援の拡充について

・短時間勤務制度
通常は1日あたり7時間30分等の所定労働時間(従事する業務によって異なります)を、6時間とする制度です。従業員が業務実態等に応じて始業・終業時刻を選択できるフレックスタイム制を導入していますが、乗務員など業務の特徴からフレックスタイム制が適用されない従業員についても、業務に支障がない範囲であれば、事由を問わずに時間単位の欠勤ができる、「フレキシブル時間」の制度を設けています。

・短日数勤務
育児・介護のため月4日間の休日を取得できる制度です。通常の休日と併せて週休3日とすることが可能です。基本的には会社が休日を指定します。短時間勤務制度との併用はできませんが、月単位で短時間勤務制度と短日数勤務制度のどちらを利用するか選択できます。

・養育休暇
月に5日まで、1日単位で取得可能できる無給の休暇です。短時間勤務制度または短日数勤務制度との併用ができます。

 従来、短時間勤務制度は3歳まで、短日数勤務制度と月5日の養育休暇制度は小学校3年生まで、月3日の養育休暇制度は小学校6年生までと、子どもの年齢に応じて制度の利用期間に制約がありました。しかし、障がいや難病のある子どもを育てる従業員が働き続けるためには、当時の制度では不十分であると考え、まず、2023年10月に、障がいや難病のある子どもを育てる社員は、これらの制度を利用できる期間を子どもが中学校3年生までに拡大しました。

 しかし実際に、障がいや難病のある子どもを育てる従業員のための両立支援制度を利用した従業員の声を聞くと、義務教育の終了以降も継続的に支援が必要な場面が多くあることがわかりました。そのため、制度改定から半年後ではありますが、こうした従業員が働き続けられる環境を整えるために、2024年4月から、障がいや難病のある子どもを養育する場合は子どもの年齢に関わらず、これらの制度を利用できることとしました。

 これらの制度の対象は、子どもを「養育している」従業員であり、子どもが扶養から外れれば、制度利用の対象外となります。また、子どもに「障がい」や「難病」があるかは所得税法の規定する「特別障害者」に該当するかで判断していますので、制度の利用を希望する場合は、証明書の提出が必要になります。


誰もが働きやすい環境を目指して

 当社では、障がいや難病のある子どもを育てる従業員に限らず、さまざまな状況にある従業員が働きやすくなるよう、制度改革を進めてきました。例えば、全従業員に対してテレワークを導入したほか、フレックスタイム制の全ての職場への導入などに取り組んできました。

 また、「ワーケーション」という、会社とは異なる場所で業務に従事でき、仕事の幅を広げることができる制度などもあります。例えば旅行の合間で仕事をするなど、いつもと違う場所で思考を巡らせることで、新たな発想・気づきが生まれることを期待しています。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
「働き続ける」という選択肢を示し、従業員の意欲が向上

 障がいや難病のある子どもを育てる従業員を対象とした両立支援制度は、開始から間もないこともあり、これまでに利用した従業員の数は必ずしも多くはありません。しかし、この制度を活用することで、「子どもが成長すると仕事をやめなければならない」という不安を軽減して働き続けることができ、仕事にも前向きに取り組んでもらえるようになっているものと考えています。

今後の課題・展望
その時々にできることを、少しずつでも進めていく

 仕事と育児の両立の課題以外にも、働く従業員の抱える事情はさまざまです。すべての従業員の思いを叶えるのは難しいかもしれませんが、従業員の声に耳を傾け、個々に異なる事情を理解し、従業員一人ひとりが当社で働き続け、活躍し続けられるようにするための取組を少しずつでも続けていきたいと思います。

従業員の声

支援制度があったから、働き続けられた

首都圏本部
Yさん

障がいのある子どもを育てる従業員への支援制度を活用し短時間勤務を継続

 2000年に入社、2016年に現在の部署に異動し、乗務員の指導業務を行っています。

 2017年に第1子を出産し、育児休業を3年間取得しました。元々は1年で復職しようと考えていましたが、子どもに障がいがあることがわかり、育児休業の利用期限である、子どもが3歳になるタイミングで復職しました※。

 障がい児の場合、短時間しか自治体の保育所に預けられず、復職後、子どものお迎え時間に間に合わせるためには短時間勤務をする必要がありました。当時は、障がいのある子どもを持つ従業員への支援制度はなく、また、育児のための短時間勤務制度も子どもが3歳になってからは利用できませんでした。そこで、子どもは要介護認定を受けていたために、唯一利用可能な介護事由による短時間勤務制度を利用しました。しかし、介護のための短時間勤務制度の利用には3年間という制限があり、私の場合、子どもが6歳になるときに期限が切れることになります。子どもが小学校に上がれば、預けられるところは更に少なくなり、短時間勤務ができなくなれば仕事を続けることは難しくなります。そのため、復職から1年もしないうちから、「子どもが小学校に入学するタイミングで退職しなければならない」と考えるようになりました。

 そんな中、短時間勤務制度の利用期限まで残り数か月というタイミングで、障がいや難病のある子どもを育てる従業員は、子どもが中学校を卒業するまで短時間勤務制度を利用できるようになりました。この制度を利用して短時間勤務を継続し、仕事を続けることができています。
※同社における育児休業の取得期限は子どもが満3歳の誕生日まで。


働き続けられることに安心し、挑戦する意欲も

 現在は、短時間勤務制度のみを利用しています。月に1度の子どもの通院には有給休暇を活用しています。2024年4月から、子どもの年齢による短時間勤務の利用期間の制限がなくなったことで、ずっと働き続けられるという大きな安心感を得られました。今後も仕事を続けていきたいという思いがありますし、当社は幅広い事業を手掛けていますので、これまでに経験したことのない新たな分野の仕事にもこれから挑戦してみたいと考えています。

(データの取材時点:2024年9月)

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