女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2023年度

住友ファーマ株式会社 (製造業)

ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向け、男性の育児参画や介護への理解を促進

認定マーク

企業プロフィール

設立
1897年
本社所在地
大阪府大阪市
事業内容
製造業(医療用医薬品の製造および販売)
従業員数
3,026人(うち女性766人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、プラチナくるみん認定、えるぼし(認定段階3)

取組内容

仕事と育児の両立支援男性育児参画

特徴的な制度・取組など

  • 育児休業の最初の10日間を有給化
  • 育休相談会を定期的に開催
  • 介護に関するリテラシーを高めるための研修を実施
  • 仕事と介護の両立に関するガイドブックを作成・配布

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インタビュー

  • 人事部 労政企画グループ
    遠藤 恭輝さん(左)
    堀瀬 博之さん(中央)
    上西 耕平さん(右)


取組のきっかけ・経緯
多様な人材の活躍に向け、「育パパ休暇」の導入からスタート

 当社は、社会に対して継続的に価値を提供していくために、事業と個人がともに成長できるようさまざまな取組を行っています。その中で、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の考え方・推進を大事にしており、女性の活躍推進や両立支援など、多様な人材が活躍できる環境を整えるための制度・取組を進めています。

 女性が結婚・出産などのライフイベントを経験する中で、男性は仕事、女性は家事・育児といった性別による役割分担意識、アンコンシャス・バイアスがある場合、仕事と育児の両立は大きな課題となりえます。そこで、当社では、男性の育児参画を促すため、2015年に「育パパ休暇」を導入しました。この制度は、年次有給休暇とは別に利用できる5日間の有給休暇で、子どもが生まれてから1年間利用できます。人事部から広く社内に周知していった結果、対象の男性従業員の約9割が取得するまでになりました。この制度の導入により、男性の育児参画へのハードルが下がり、意識改革が進んだと考えます。その後、意識改革が急速に進んだこともあり2021年には、育児休業の有給期間を最初の5日間から10日間に拡大し、性別に関わらず有給で取得することができる新たな育児休業制度を導入し、本制度は発展的解消をしました。

 2015年以前は、男性で育児休業を取得する者はまだ数名という状況で、女性も、研究部門では育児休業を取得して復帰する者が多かったのですが、営業職(MR)では結婚・出産を機に退職する者も多くいました。こうした中で、仕事と育児を両立できる環境を整えなければ、今後、優秀な人材の確保が難しいのではないかとの声があり、全国転勤を伴うMRについて結婚時や育児中の社員の勤務地に配慮をする制度として「MR地域選択制度」を導入するなど段階を踏んで取組を進めてきているところです。

 介護に関しては、現在のところ制度利用者は少ないものの、従業員の年齢構成を踏まえると今後増加してくることが見込まれるため、研修などの取組を進めています。

具体的な取組の内容

男性の育児休業取得率は100%を達成

 育児関連での独自の制度としては、前述のとおり、育児休業の最初の10日間を有給休暇としているほか、育児休業を子どもが1歳6か月になるまで、又は1歳到達後の最初の4月末日まで取得可能(保育所に入れない等の場合は2歳まで取得可能)にしています。

 また、3か月に1回程度の頻度で育休相談会をオンラインで開催し、男性従業員にも多く参加いただいています。この相談会では、会社の制度の説明だけでなく、性別にかかわらず、パートナーとともに育児に参画する時代であるといった世の中の状況や、育児に関する知識や心構えなどを伝えています。

 2022年度の男性の育児休業取得率は100%を達成しており、「男性育休取得率100%」は当社の中期経営計画2027でも目標として掲げています。この「100%」という強い発信が取得推進にもつながっていると考えます。


介護に関するリテラシーを高めるための研修を実施

 介護関連の制度としては、介護休業を、要介護者1名について最大1年3か月(458日)まで取得できるようにしています。また、介護休暇を10分単位で取得可能としているほか、特別積立休暇(失効年休積立休暇)を介護を理由として使えるようにしています。それ以外においても労働時間の短縮または業務量の軽減、時差出勤など、仕事と介護の両立を支援する制度を整えています。

 取組面では、2022年に、管理監督者を対象として介護に関するリテラシーを高めるための研修を実施しました。仕事と介護を両立するためには、介護の問題を自分だけで抱えこまず、積極的にプロ(地域包括支援センター等)と相談しましょうといった内容です。この研修の反響が大きかったこともあり、2023年には、若い従業員にも認識を持ってもらうため、対象者を全社員に広げて同様の研修を実施しました。このほか、「仕事と介護両立のしおり」というガイドブックを作成し、介護に直面した際の対応方法や各種制度の活用方法など、仕事と介護の両立に役立つ情報を提供しています。



「仕事と介護 両立のしおり」

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
男性も育児休業を取得することが当たり前の風土が定着

 これまでの取組により、男性従業員も育児休業を当たり前に取得する風土が形成されてきています。現在では、対象者本人も周りも、育児休業は取得するものだと捉えられており、否定的な反応をする社員はほとんどおりません。2022年度に実施した男性育児休業取得者向けのアンケートでは、「育児の大変さ、大切さがよく分かった」という声に加え、「復職時に周りが温かい言葉をかけてくれた」、「良い会社、良いメンバーに支えられていると実感した」といった声が挙げられました。休業期間中はどうしても業務を他のメンバーに助けてもらわなければなりませんが、お互い様の文化が広がって、より子育てをしやすい職場環境が作られていくのではと感じています。

 また、近年は採用面接時に男性の育児休業について質問・話題に上ることも多く、学生において、両立支援に対する関心の高まりを感じます。プラチナくるみん認定の取得や育児休業等の取得実績を見て、安心感をもって入社してもらいたいと思います。

今後の課題・展望
いざ介護に直面してもあせらないようにしていきたい

 介護に関しては、現状制度利用者は少ないものの、問題意識は強く持っています。人事部の相談窓口で介護に関する相談を受けていて感じることは、いざ介護に直面すると、心の準備ができておらず、自身が置かれている状況と制度を結びつけるのが難しいのではないかということです。きちんと制度を活用してもらうためにも、介護は誰もが経験する可能性があり、身近で当たり前のことであるという認識を広め、いざ直面してもあせらないように介護リテラシーを高め、介護を理由に離職する従業員が出ないようにしていきたいと考えています。

従業員の声 制度利用者の声画像

男性の育休取得は、育児そのものだけでなく
心の面でも大きな力になると実感しました。

IT&デジタル革新推進部 DX推進グループ
籔田 義和さん

双子が誕生することが分かり育児休業取得期間を延長

 私は2012年にキャリア採用で入社しました。現在はIT&デジタル革新推進部に所属しており、システムの企画および運用を担っています。2017年に結婚し、2022年12月に双子が産まれたため、2023年1月から3月まで育児休業を取得しました。

 妻の妊娠が分かった当時、男性の育児休業が世の中でも一般的になってきており、会社にも制度があることを認識していました。妻が高齢であったこともあり、少なくとも1か月は育児休業を取得しようと決めていました。その後、双子であることが分かり、さらにサポートが必要と感じたため、上司と相談し、休業期間を1か月から3か月に延長することにしました。

 妊娠が分かってからは引継ぎ資料を準備し、早い段階から同僚への業務引継ぎを実施することで、育児休業取得の理解を得ることができました。

育児そのものだけでなく心の面でも大きな力に

 今回インタビューを受けるにあたって妻にも話を聞いてみました。女性にとって産後は体力的にも精神的にも消耗しており、加えて双子の育児となると一人で向き合うのは大変だったが、私がそばにいるだけでも気持ちが楽になったとのことでした。特に生後2、3か月の間は、育児そのものだけでなく、パートナーの心の支えとして男性の育児休業は大きな効果があると感じました。男性も授乳以外の育児はできますので、育児休業取得は、女性と同様に必要であることを実感しました。

 現在育児休業中の妻が2024年4月から復職するため、今後は昼間に保育所に預けている子どもが熱を出したりした際、対応できる体制があれば安心できます。また、育児休業希望者の心のハードルを下げるため、育児休業期間中に業務負担をかけるチームや同僚もメリットが享受できるような制度・仕組みがあるとよいと思います。

(データの取材時点:2024年1月)

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