女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2023年度

キユーピー株式会社 (製造業)

女性の活躍が当たり前になる会社への変革の挑戦

認定マーク

企業プロフィール

設立
1919年
本社所在地
東京都渋谷区
事業内容
「マヨネーズソース」その他一般ソース類の製造販売、各種瓶缶詰食料品、その他各種食料品の製造販売、等
従業員数
2,408人(うち女性1,137人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、プラチナくるみん認定

取組内容

仕事と育児の両立支援男性育児参画

特徴的な制度・取組など

  • 育児休業復帰者を対象とした制度知識・キャリアイメージの形成を支援する取組
  • 育児休業によるキャリア中断が処遇に影響を与えないような人事制度の見直しに向けた取組
  • 転居を伴わない総合職制度、配偶者異動制度、コアタイムのないフレックス制度の導入
  • 企業トップによる女性の活躍推進および能力発揮に向けた職場風土の改革

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インタビュー

  • 人事本部 労務部
    関 希実さん(左)
    人事本部 人事部
    西出 哲子さん(右)

取組のきっかけ・経緯
人を柱とした人事制度の改革

 当社はコーポレートメッセージとして「愛は食卓にある。」を掲げ、めざす姿を「私たちは『おいしさ・やさしさ・ユニークさ』をもって世界の食と健康に貢献するグループをめざします」としています。多様な背景を持つ従業員が存在する中で、グループ従業員一人ひとりが理念や社是・社訓を大切な求心力として業務に向かっています。人を事業における大事な柱として捉え、多様な人材が活躍できる仕組み作り、いわゆる人的資本経営に取り組むことで、全ての従業員の活躍をめざしています。

 当社従業員の約半分は女性です。創業の頃は、「大切なお嬢様を大事にお預かりしてお戻しする」という考え方の下、女性の勤続年数は短い傾向にあり、従来の制度は男性が活躍しやすい男性視点で作られていました。転換のきっかけは、1990年頃の女性の総合職採用制度の導入でした。同じタイミングで、女性が多かった一般職からの総合職転換制度も始まり、企業体質の変革に向けた動きが始まりました。

 2013年頃からは、経営アドバイザリーボードや社外取締役、監査役に、積極的に外部の女性有識者を招聘し、トップの意識改革、制度の変革に向けて取組を加速させました。同時に、現場(工場)の側でも産前産後休業および育児休業に関する制度の充実化を図り、トップダウンとボトムアップの双方で両立支援制度の変革に本格的に取り組む機運が高まりました。

 現在は、育児休業制度の充実にとどまらず、休業中のバックアップ、評価・制度の工夫、研修制度の充実やさまざまなプロジェクトの実施を通じて、女性の勤続年数は年々増加してきています。また、女性の管理職比率も増加しています。

具体的な取組の内容

男性従業員の育児休業申請を仕組みで支援

 人事本部から、育休取得対象者と所属本部総務担当、上司にメールを送り、利用を促進する仕組みがあります。取り組みの効果もあって育児休業を取得する男性従業員は増えてきており、全体的には取得日数は短いものの、徐々に月単位で取得する従業員も出てきています。今後は取得日数増を図ることで、男性従業員のワークライフバランスの充実とそれによる の両立支援につなげたいと考えています。


女性従業員への情報提供の仕組み

 産前産後休業制度や育児休業制度の情報を含めた人事労務系の情報集約サイトがあり、そこにアクセスすれば誰でも制度の内容や申請方法を確認することができるようにしています。また、事業所ごと、部門ごとに制度の周知を図るようにしています。加えて、制度改定時には全従業員に通知をし、制度を知る接点を増やしています。また、近年は産前産後休業および育児休業を取得することが当たり前になってきているため、身近な人からも経験談が聞けるようになっています。


両立支援制度の充実化

 転居を伴わない総合職制度や、配偶者異動制度(配偶者が転勤になった場合、同じ勤務地の事業所等に異動できる制度。配偶者が当社の従業員でない場合も利用可能。)、コアタイムのないフレックス制度(例:早朝から働き、途中で子どもの送迎をしてから、また業務に戻る)、法定を超える当社独自の育児休業等の制度(例:育児休業は子が2歳に達するまで延長、所定外労働や時間外労働・深夜業の制限を子が小学校4年生7月末まで延長)などの導入を行いました。また、早期から育児休業復帰者へのセミナー(現在はオンラインでのコンテンツ配信に移行)を実施し、職場への復帰をサポートしました。処遇についても、ライフイベントが昇格や待遇に不利にならないよう、評価については育児休業取得前の直近の考課を採用する制度を持っています。


家族と過ごす時間を大切に―男性従業員向け料理教室の開催

 当社は食品会社としてベビーフードを扱っているため、社内のパパ向けに離乳食教室を開催したところ、大変好評だったため、現在は一般の方に向けても実施しています。現在は新型コロナウイルス感染症により中止しましたが、以前は男性従業員向け料理教室「Let’s男飯」を開催していました。働き方改革でできた時間を、家族と過ごす大切な時間にしようという考えで始めたもので、参加後に家庭で料理をし、ご家族に喜ばれたという嬉しい声も多くありました。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
トップダウンとボトムアップの融合で取組を推進

 当社は、2013年から、仕事と育児の両立支援に関する制度改革に本格的に向き合いました。当時は産前産後休業および育児休業取得者が右肩上がりで増えてきており、今後も増え続けることが明らかで、現行の制度のままでは乗り切れないことが管理と現場の双方の共通認識となり、会社が一体となって取組を進めました。

 経営層のアプローチについては既述のとおり、社外の女性有識者を招くことなどで意識改革を行いました。工場では、工場長に協力を仰いで旗振り役となってもらい、産前産後休業および育児休業経験者に白羽の矢を立ててプロジェクトをリードしてもらう形で管理職向け・従業員向けにセミナーを行いました。

今後の課題・展望
時代の変化に即した制度改革を継続

 「育児」と聞くと、子どもが小さい時のことをイメージすることが多いと思いますが、親としては子どもが高校生くらいになるまで子育ての悩みを抱えることがあります。時には仕事が続けられないという状況になることもあり、そうした事情を持つ従業員の悩みに対応していきたいと考えています。共働きが当たり前になり、片方のパートナーに任せきりにしておけばいいという時代ではなくなりました。こうした時代の変化に合わせた支援制度作りのため、従業員の声を広く集め、検討していきたいと考えています。

従業員の声 制度利用者の声画像

現場での両立支援推進をリード

鳥栖キユーピー(鳥栖工場)
総務課
坪井 夕香さん

 2000年に地域職として生産工場に配属となり、2012年に1年間、1回目の育児休業を取得しました。2015年には、生産工場における初めての女性管理職として勤務しました。2017年に二人目を出産しましたが、この時は8か月間の育児休業を取得しました。2018年に配偶者異動制度を利用し、現在の職場である鳥栖キユーピーに異動し、現在、総務課の責任者として勤務しています。

 1回目の育児休業取得の際は、工場では女性従業員がキャリアを積んで働き続けるという事例がほとんど無い中、キャリアの中断はもったいないと悩んでいました。当時は育児休業制度導入の過渡期であり、生産工場を含めたキユーピー全体で制度利用を後押しするという追い風がありました。また制度を利用して復帰したときに制度利用をけん引するプロジェクトを実施してもらえないか、という声掛けをいただいたこともあり、育児休業を取らないという選択肢はありませんでした。復帰後のプロジェクトでは、当時の工場長が旗振り役となり、組織が一丸となって産前産後休業、育児休業から復帰までの経験に関するセミナーや上司向けのセミナーの実施といった意識改革の取組を行いました。

 私の場合、通勤時間の制約があまりなかったので、短時間勤務制度は利用せず、フルタイムで働くことができています。残業についても周囲のサポートもあり、あまり負担なく働くことができています。通勤時間の制約がある職場の同僚の声からは、短時間勤務制度のありがたみも伝わってきます。

 ただし、短時間勤務制度はフルタイム勤務に戻るための準備期間であるということを周囲にいつも伝えています。工場で働くうえで、フルタイム勤務に戻る一番の課題は交替勤務制度だと考えています。これは配偶者や家族ともよく相談したうえで準備をすることが大事だと思います。

 これまでの取組は、かつてはマイノリティーであった育児休業取得の推進に注力されてきましたが、今後はそこにフォーカスを当てるのではなく、一人ひとりの多様性を認め合いながら寄り添い、さまざまな制約を抱える中でも能力を発揮できる仕組みや風土が育ってくれればと思っています。

従業員の声 制度利用者の声画像

育児への向き合い方が変わった

研究開発本部
田中 亮治さん

 2006年に当社に入社して以来、研究開発部門に所属しています。2012年に一人目の子どもが生まれたのですが、当時、妻は実家に里帰りをして出産をしました。2016年の二人目出産の時に初めて育児休業を取得しました。このとき取得したのは4日間でしたが、ちょうど出産が年末のタイミングだったので冬期休暇に付ける形で実質2週間の休暇となりました。

 私たちは夫婦共働きで東京に勤務していますが、二人とも実家は大阪です。上の子が既に幼稚園に通っていたこともあり、二人目は東京での出産を考えていました。育児休業制度については事前に知っていましたし、周囲にも先輩男性従業員の取得者がいて、取得しやすい環境にありました。

 育児休業を二人目で初めて取得したことで、一人目との大きな違いを感じました。一人目の時は、妻の出産、里帰りから東京に戻って来るまでに2か月が経っていたので、子育ての邪魔になるのではと遠慮がちになっていました。二人目は育児休業制度を利用して病院の立ち合いからずっと一緒にいられたので、育児のリズムが分かったような気がして、一人目の時よりも積極的に関与できたと思います。

 最近は、男性の育児休業を数か月間取得するメンバーも増えてきて、私が利用した当時と比べ長期化が進んでいると思います。また、利用時期もフレキシブルになってきており、徐々に制度が手厚くなったことでワークライフバランスの充実につながっていると感じています。

(データの取材時点:2023年10月)

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