女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2017年度

ユニリーバ・ジャパン株式会社 (製造業)

新しい働き方「WAA」で日本の働き方を変えていきたい

認定マーク

企業プロフィール

設立
1964年
本社所在地
東京都目黒区
事業内容
製造業(日用品・食品)
従業員数
500人(うち女性166人)(グループ連結)
企業認定・表彰等
くるみん認定

取組内容

仕事と育児の両立支援テレワークフレックスタイム制男性育児参画

特徴的な制度・取組など

  • 従業員が働く場所、時間を自由に選択できる新しい働き方「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を全社で導入。
  • 75%の従業員が、生産性の向上を実感。
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インタビュー

  • 取締役
    人事総務本部長
    島田 由香さん

取組のきっかけ・経緯

 当社では、従業員一人ひとりが自分の人生を健康に、豊かに生きて欲しいと考えています。また、個人が最大限力を発揮して活躍できるようにすることが重要であると考えています。このため、「すべての社員がよりいきいきと働き、健康で、それぞれのライフスタイルを継続して楽しみながら豊かな人生を送る」ことを新しい働き方のビジョンとして掲げ、2016年7月から、「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入しています。
 導入のきっかけとなったのは、2014年にイタリア出身の代表取締役 プレジデント&CEOの フルヴィオ・グアルネリが着任した際、連日残業している従業員を見て、「なぜ遅くまで帰らないのか?」「家族とはいつ過ごしているのか?」「9時の始業に合わせてエレベーターに行列ができるのはなぜか?」と素朴な疑問を呈したことです。当社ではこれまでも働き方の柔軟性を高める施策として、フレックスタイム制度、在宅勤務制度を導入してきました。さらに働きやすさや生産性を高められるよう、従業員とともに新しい働き方のビジョンと仕組みを検討した結果、役員全員のコミットメントの下、「WAA」を全社に導入することとなりました※1
※1 工場、営業の一部を除く。

具体的な制度の内容

 「WAA」は、働く場所・時間を、従業員が自由に選ぶことができる制度です。事前に上司に申請すれば、理由を問わず、会社以外の場所でも勤務することが可能です(機密が保てる環境に限る)。勤務時間や休憩時間は、平日の6時から21時の間で自由に決められます。各従業員は、勤務時間中は必ず連絡が取れるようにしています。海外との電話会議等のやむを得ない理由で6時以前または21時以降に働く必要がある場合には、事前の役員承認を必須としています。 「WAA」は、全従業員を対象としており※2、期間や日数の制限はありません。育児・介護短時間勤務制度の利用者は、標準労働時間を短縮した状態で、「WAA」を利用できます。
 「WAA」の導入と同時に、従業員に自分の働き方をより意識してもらうため、1か月の所定外労働時間の目標を45時間に定めました。なお、1日の標準労働時間は7時間35分、1か月の標準勤務時間は7時間35分×所定労働日数としています。労働時間は1か月単位で集計し、所定外労働時間を計上します。もし実際の労働時間が、1か月の標準労働時間に満たなかった場合には、翌月精算できます。
 「WAA」をはじめとする新しい働き方は、従業員の働き方の選択肢を広げるものです。最も効率的でモチベーション高く仕事ができるような働き方を自ら選んでもらっています。導入当初には、オフィスでも自宅でもない就業場所として、各地のシェアオフィスも試験的に利用しました。そして、従業員の業績は、従来からの成果主義をベースにした人事評価制度により、アウトプットのみで評価しています。
 2017年9月時点で、92%の従業員が「WAA」を最低1回は利用しています。利用頻度については1~2回/月が約40%、1~2回/週が約20%となっています。また、利用事由としては、通勤時間の割愛・ラッシュアワーの回避、家族のケア・看護等が最も多くなっています。そのほか、子どもの学校行事、家庭の用事、通院、スポーツや習い事、家族と過ごす時間の確保等の目的でも多く利用されています。
※2 工場、営業の一部を除く。

制度導入による効果等

 当社では、「WAA」導入による効果や課題等を測定するため、「WAA」に関する従業員アンケートを継続的に実施しています。直近のアンケート結果では、「新しい働き方により、毎日が良くなった」という質問に「はい」と回答した従業員は全体の68%を占めています。また、 「生産性が上がったと感じる」と回答した従業員は75%であり、生産性は「WAA」導入前と比較して30%程度上昇したとの回答が多くなっています(生産性の把握は「実感値」から算出)。労働時間が減ったと感じている従業員は約30%であり、実際、制度導入前と比較して所定外労働時間が約10~15%減少しています。これらの結果を踏まえ、当社では、「WAA」の導入は成功であったと考えています。
 採用面でも、今年度の新卒採用、中途採用において「WAA」に関する関心が高まっていると感じています。応募動機として、当該制度に触れている人も非常に増えています。
 制度導入については、社外からの反響も非常に大きく、多くのメディア等に掲載されました。また、企業の方からの関心も高いため、10回以上にわたり、制度説明会を行ってきました。当社のビジョンに賛同して下さる方のコミュニティ「Team WAA !」も発足しています。説明会の参加者は既に400社を超え、「Team WAA !」は600名超が参加する大きなコミュニティとなっています。

今後の課題・展望

 「WAA」を導入して2年目になりましたが、今課題として感じていることはマネージャーの資質です。マネージャーには部下の「管理者」ではなく「ファシリテーター」としての役割を期待しています。働く時間・場所が自由度を増す中でも、 効果的にコミュニケーションをとり、部下を伸ばしていける資質が必要です。しかし、マネージャーの力量により、制度の運用やマインドセットに大きな差異があることがわかってきました。このため、マネージャーを対象に部下とのコミュニケーションやセルフマネジメント等の研修を行い、資質や力量の向上に努めています。
 また、「Team WAA !」の活動を通して、社会に対して「新しい働き方」について発信することによって、日本の「働き方改革」をリードしていきたいと考えています。
(2017年8月時点)

制度利用者の声制度利用者の声画像

新しい働き方を取り入れ、双子の育児と仕事を両立

情報システム ITマネジャー -ビジネスパートナー
浅尾 康二さん

「WAA」をフル活用して一時期は育児中心のライフスタイルに

 2016年7月の「WAA」制度導入当時、私の妻は双子を妊娠しており、臨月間近でした。そのため、当初から「WAA」をフル活用しようと考えていました。出産前には妻のケアや家事等のために利用し、出産後は育児・家事等のため、平均して週2日から多い時は5日程度利用していました。当時は朝6:30~7:30にメールをチェックし、子どもの起床にあわせてミルクを用意し、朝食。それ以降は仕事をしながら、 子どもに合わせて、3時間間隔くらいでミルクをあげたり、おむつ替えをしたり、あやしたりという生活でした。
 一週間の予定をOutlookでチーム内に公開し、仕事と育児の時間をパズルのように組み換えながら予定を組み立てていましたが、予定外のことが起こることもあります。そういうときには、育児で抜けた時間をカウントしておいて、残りの時間を勤務時間として報告していました。両親は遠方に住んでいるのでサポートを受けることは難しく、「WAA」の制度がなかったら、私の仕事と育児の両立は難しかったと思います。
 2017年4月に子どもたちが保育園に入園し、妻が復職してからは、主に子どもの急な病気の際に利用しています。保育園から急にお迎えの要請があった場合には、私が迎えに行くことがほとんどです。オフィスにいなくても、Skypeのステータスがオンラインの時には電話もかかってきますし、会議にも参加します。当社ではすべての会議室にSkype会議用のキットが置いてありますので、むしろ気軽に会議がしやすくなったと感じています。今は平均すると週の約2.5日(月10日程度)は自宅で仕事をしています。

仕事に対するマインドセットを変えました

 「WAA」によって働き方の自由度が高まったことに伴い、仕事に対する意識を変えていきました。オフィスで自席にいることが仕事なのではなく、手と頭を動かしてこそ仕事だと考えています。自宅で育児をしながら仕事をするためには、細切れの時間に集中して仕事を進める必要がありますが、 業務を効率的に進めるために工夫をすることで、結果的に、仕事の効率は上がったと感じています。「WAA」により、育児と仕事を両立することができたため、休職する必要がなく、育児休業は取得しませんでした。
 当社はメーカーとして、お客様と同じ時間軸での対応も必要です。今後、自由な働き方がもっと浸透すれば、就業時間の概念が薄れ、どのように社内外の調整を図っていくのかが課題となってくるかもしれないと感じています。

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