女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2021年度

桐生信用金庫 (金融業、保険業)

女性職員の営業職への配置転換とパート職員の正職員登用により、職域拡大を推進

認定マーク

企業プロフィール

設立
1925年
本社所在地
群馬県桐生市
事業内容
金融業、保険業
従業員数
505名(うち女性259名)
企業認定・表彰等
くるみん認定、プラチナくるみん認定、えるぼし(認定段階2)

取組内容

女性活躍推進女性採用拡大女性職域拡大女性管理職登用

特徴的な制度・取組など

  • 人財教育センターを設立し、人材育成とキャリア支援に注力
  • 年次にかかわらず、女性総合職の営業職への配置転換を推進
  • 積極的にパート職員を正職員に登用

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インタビュー

  • 人事部 次長
    桐生 亜耶乃さん

取組のきっかけ・経緯
女性活躍推進法の制定をきっかけに

 当庫の正職員は総合職と事務職に分かれていますが、従来は総合職であっても営業に従事する女性職員がおらず、女性職員が結婚や妊娠を機に退職してしまうことが多くみられました。
 女性職員が管理職を目指す環境づくりができていないという課題意識があったなか、2015年に女性活躍推進法が制定されたことをきっかけに、職域の拡大や人財教育センターの新設などの対応を進めました。同センターの設立により、人材育成により重きを置く方針を当庫内外に示し、特に女性職員向けの研修やキャリア形成支援に力を入れるようになりました。

具体的な取組の内容
女性職員の職域拡大と研修体制・内容の整備

 以前は、営業職に任命する職員の人選は、人事部主導で支店や本人の意思を尊重した上で決めており、女性の営業職は一人もいませんでしたが、女性職員の職域拡大の一環として、2015年からは、女性の総合職の営業職への配置については、各支店の状況に応じて支店長が任命しています。総合職の若手職員に関しては、営業職への配属の可能性を伝えて採用していますが、最近は営業を希望して入庫した職員も多く、営業に対する抵抗感はあまりないと感じています。パート職員から正職員に転換する際に総合職を選択した例もあります。新たに営業職に配置された職員の不安や不満を解消するため、営業を行うにあたって特に足りないスキルと考えられる融資業務の内容を中心に、複数の関連部署と連携した1か月間にわたる研修を経て現場に出てもらうなど、より丁寧な支援体制を整備しました。
 教育に関しては、以前は職員が自身のキャリアを考えるための研修がありませんでしたが、最近は入庫5年目の職員を対象にキャリアデザイン研修を実施しています。本研修では、これからの当庫での働き方や目指す方向性を明確にしたり、先輩職員との座談会を通じて自分と同じ悩みを持つ職員がいることを知ってもらったりして、特に女性職員が当庫で長く働くイメージを持つために有効であると考えています。ほかにも、全国信用金庫協会や群馬県信用金庫協会などが主催する女性リーダー研修や女性職員自己革新講座に当庫職員を派遣して、自身の昇進や昇格を意識する場を提供しています。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
女性職員が管理職になることに対する意識の変化と定着率や勤続年数の向上

 現在は営業職100名のうち40名程度が女性職員となり、女性職員も営業や融資業務を担当して当然という認識が当庫内で高まってきたと思います。また、以前は女性管理職が一人もいませんでしたが、現在は4名おり、当庫内でロールモデルとなる女性職員が複数いることによって、女性職員自身の中で管理職を目指すという意識が芽生えてきたと感じています。
 職域拡大や研修体制の整備などに加えて、当庫では性別にかかわらず全ての職員が仕事と家庭を両立できるように制度の充実を図ってきました。具体的には、1日単位でしか取得できなかった年次有給休暇を1時間単位で取得可能にしたほか、男性職員にも積極的に育児休業を利用してもらうために最初の7日間は有給扱いにしています。以前は育児短時間勤務制度の利用者はあまりいませんでしたが、このような制度づくりを進めた結果、同制度を利用してほぼ全ての女性職員が産前産後休業や育児休業から復帰しており、定着率や勤続年数が年々向上しています。男性職員の育児休業取得も100%には至りませんが徐々に増えてきており、制度を利用しながら仕事を続けてもらう環境が整ってきていることを実感しています。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
職員の意識改革の難しさ

 女性職員の活躍を推進するという方針は経営陣とも一致していましたが、当初は何から手をつければよいのか戸惑いがありました。取組を始めた当時、管理職は男性しかいませんでした。支店での業務のローテーションは各支店の管理職の裁量次第であるため、女性職員にやる気があっても上席の男性管理職の理解がなければ取組を進めることが難しく、男性管理職に女性職員の働き方の変革の重要性を理解してもらう必要がありました。一方で支店においては、女性職員の活躍を含む人材育成と支店経営の方向性を一致させることに難しさを感じていました。人材育成と業績向上はどちらも支店長の役割ですが、営業に慣れない女性職員がすぐに支店の業績に貢献できるかというとそうではありません。それぞれの立場で難しさを感じていましたが、人事部としては、女性職員の育成や職域拡大に関する方針を支店長に説明する場を設け、理解を得るように努めたことに加えて、支店経営の計画に人材育成も含めてもらうように働きかけをすることで、当庫が一体となって女性職員の活躍を進められるように取り組んでいます。
 また、制度を利用してもらうための職員の意識改革にも工夫が必要と感じています。仕事と家庭の両立を支援する制度は以前からあったものの、利用しやすい風土がなく、利用者があまりいなかったことから、制度の情報のみではなく制度利用者の声も紹介し、人事部から対象者に直接声掛けすることで積極的な利用を促しています。

今後の課題・展望
女性管理職比率の向上と全ての職員が仕事と家庭を両立できる環境づくりに向けて

 当庫では、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の中で、2025年度末までに女性管理職比率を10%以上にすることを目標としています。年々改善傾向にはありますが、目標の達成に向けて、現在実施している研修に加えて計画的な業務ローテーションを推進していきます。営業を経験した女性職員が事務に戻ると、管理職としてのステップアップに不安を覚えてしまうので、計画的にいろいろな業務を経験することで、キャリアアップを意識してもらいたいと考えています。
 女性職員に長く働いてもらうには男性職員の協力も不可欠です。女性職員の活躍が進むことによって、男性職員も一緒に活躍していってもらいたいと考えています。男性職員がより育児休業を取得しやすい環境の整備や職員の意識改革を促し、性別にかかわらず全ての職員が仕事と家庭の両立をできるようにしたいです。

従業員の声 制度利用者の声画像

正職員になったことで、より支店の仲間になることができました

伊勢崎支店
茂木 佳子さん

支店長の後押しで正職員登用制度に挑戦

 私は2008年にパート職員として入庫し、窓口業務や融資事務に従事していました。当庫では、パート職員が正職員になるには預金や融資など業務に関する複数の試験を受験して認定を取得する必要があります。私も正職員登用制度があることは知っており、いつか正職員になれるチャンスがきたときのために前もって認定の取得を進めていたものの、金融機関に勤めること自体が初めての自分が果たして正職員として働けるのか自信がありませんでした。家事や育児と両立しながら自学自習を進めるのは大変でしたが、3店舗目で異動した先の支店長から正職員への転換を勧めてもらいました。支店長が私に声をかけてくれたことはとてもうれしく、ありがたかったです。総合職と事務職の選択には悩みましたが、上席から総合職の仕事のやりがいや事務職との給与体系の違いなどの観点からアドバイスしてもらい、2017年10月に総合職として正職員になりました。勤務時間が長くなり、支店のあらゆることに気を配らなければいけなくなりましたが、より支店の皆さんの仲間になれたと感じており、モチベーションが高まりました。

自分らしい営業活動で、できるところまで昇格を目指していきたい

 2020年4月には、マネーアドバイザー(MA)として、個人のお客様を対象にした預かり資産専門の営業に任命されました。コロナ禍の時期であったため、通常行われるMA向けの集合研修を受講することができませんでしたが、MAの統括部署から特別に支店に人員を派遣してもらい、OJTで業務を身につけてきました。営業の先輩たちと同行訪問をさせてもらうことで、営業の仕方には各人で特色があり、自分の色を持つことが重要と考えるようになり、先輩たちの良いところは積極的に取り入れながら、自分らしくお客様と信頼関係を築くことを心掛けています。その結果、2021年度上半期においては当庫内でトップの営業成績を収めることができました。
 私が正職員になったとき、周囲に正職員登用制度を利用した方はいませんでしたが、支店の皆さんがいたので不安はありませんでした。今は役職がないので、まずは主任になることを目標に日々の業務に励み、できるところまで昇格を目指していきたいです。自身の経験からパート職員の気持ちはよく理解しているので、正職員への転換を考えている方にはサポートをしたいですし、是非、正職員登用制度を利用してもらいたいです。

(データの取材時点:2021年12月)

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