女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2021年度

社会福祉法人あすなろ会 (医療、福祉)

充実した休暇制度と研修制度のもと、女性のキャリア継続やステップアップを支援

認定マーク

企業プロフィール

設立
1968年
本社所在地
鳥取県鳥取市
事業内容
医療・福祉業
従業員数
952名(うち女性698名)
企業認定・表彰等
くるみん認定、えるぼし(認定段階3)、プラチナえるぼし

取組内容

女性活躍推進女性管理職登用仕事と育児の両立支援

特徴的な制度・取組など

  • 不妊治療休暇など、法令に先んじた制度づくりを実施。
  • 研修制度を抜本的に改革し、法人全体で階層別研修制度を運用。

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インタビュー

  • 理事長
    濱﨑 淳子さん

取組のきっかけ・経緯
縁があった職員と長く働くために、常日頃の積み重ねから

 当法人が特別養護老人ホームを設立したときは「介護士」という言葉がなく、「寮母」と呼ばれていたほど、介護は女性が当たり前と考えられてきた職種でした。のちに社会福祉士や介護福祉士が国家資格になったことから介護の仕事が社会的に認知されるようになり、当法人も就職希望者が増えました。以前は「女性は結婚したら退職」という傾向がありましたが、縁があって入職してくれた職員たちにはなるべく働き続けてもらいたい、出産後に戻ってきてもらいたいという思いがあったことから、休暇制度などを充実させることで、働き続けられる職場づくりを行ってきました。そのような日々の積み重ねの中、女性活躍推進法の施行に合わせ、これまでの当法人の施策を整理したことをきっかけに、えるぼし認定やくるみん認定の取得にも取り組むようになりました。

具体的な取組の内容
充実した休暇制度と研修制度

 当法人はもともと女性が多かったことから、産前産後休業や育児休業、就学前までの育児短時間勤務はもちろん、働きやすい時間を選択できる制度やほぼ取得上限のない介護休暇を取り入れてきました。加えて、国が舵を切る前の2015年4月から不妊治療休暇(無給)を導入しています。導入のきっかけは、職員から不妊治療を理由とした退職の相談があったことでした。不妊治療は周囲には見えない努力が必要であり、私自身もその職員の思いに共感したこと、また、社会的にも問題になっているという認識があったため、当法人としてもできることがあると考え、本部職員と協議して導入を決めました。最長で1年間の取得が可能で、現在も活用している職員がいます。当法人では、このように退職以外の選択肢を用意することで、落ち着いたときに戻ってきてもらえるような仕組みづくりに取り組んでいます。
 職員のキャリア形成をサポートする取組としては、研修制度を徹底的に改革しました。以前は施設ごとに採用時の研修を行っていましたが、施設数が増えていく中、それでは当法人の職員としてのマインドや帰属意識を持つことができないのではないかと考えていました。その頃、当法人内での30年永年勤続職員表彰式で「何も知らない介護の世界に飛び込んでやってこられたのは仲間がいたから」という職員のスピーチを聞き、横のつながりを強くする仕組みづくりが必要であると考えました。現在は、採用時の研修では「社会の困りごとを何とかしよう」という当法人の理念や沿革を知ってもらい、共同炊飯をすることで同期の意識づくりを促し、フォローアップ研修も年3回実施しています。また、採用時以外にも階層別研修を充実させました。管理職にはマネジメントの視点も必要になることから、管理職向け研修には経営に詳しい外部講師を招いています。最近は後輩の指導に悩む管理職職員が多いため、別途3年間を通したコーチング研修も実施するなど、職員の悩みに合わせて対応しています。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
採用応募者や女性管理職が増え、女性職員の意識も変わりました

 充実した休暇制度や研修制度は採用応募者からも高く評価されており、当法人のセールスポイントになっています。加えて、取組の成果として、くるみん認定やえるぼし認定を取得したことによる効果を実感しています。プラチナえるぼし認定は、2021年に中国地方の法人として初めて取得することができました。県外からの移住者がこれらの認定を当法人への応募のポイントとして挙げているなど、反響はとても大きいです。このような外部からの評価を取得したことで、働きやすい職場であることを職員も認識してくれています。
 働きやすい環境を整えて研修制度を充実させたことで、女性の管理職も増えました。現在は20名の施設長・管理者のうち8名が女性です。女性の管理職が増えたことで、女性職員の間には「自分たちも頑張れば管理職になることができる」という意識が生まれてきたと感じています。当法人は設立50年を迎え、女性の先輩が施設長や管理者として活躍することが当たり前になってきたことが目に見えて分かるので、それが女性職員のモチベーション向上につながり、志高く管理職を目指してほしいと思います。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
新卒人材の確保に向けて

 当法人に限らず全国的な話ではありますが、性別を問わず人材の確保が難しく、特に介護士を新卒で採用することが年々困難になっています。初めて社会に出てきた新卒採用者が当法人に定着してくれるように、職員は温かい目で見守りサポートをするように努めています。保育士に関しては、最近になって民間の小規模保育園が増えたために当法人への採用応募者が減ってしまい、入職者がゼロの年がありました。それまでは外部の団体が主催する就職説明会に参加するだけでしたが、人材確保のために当法人独自でも説明会を開催するようにしたところ、プラチナえるぼし認定などの取組の効果もあり、今年度は9人を採用することができました。

今後の課題・展望
職員の声を聞いて、より良い職場づくりを

 職員にとって働きやすい環境づくりを進めてきましたが、短時間勤務の職員や日勤職員が多くなり、夜勤に対応できる職員が少なくなったことから、うまく職員の希望を実現できないことがあります。
 性別にかかわらず、人材の確保は引き続き大きな課題です。日本語学校での語学習得を経て介護福祉士養成校へ進学する留学生の採用(奨学金付き)や外国人技能実習生の受入れ、個人の意向を確認した上での定年延長などの取組を通じて、人材不足を補っています。全ての職員にとって働きやすい職場づくりのため、施設長を経由せず、職員が自身の働き方について思うことを率直に本部事務局に伝える自己申告書を提出してもらうなど、職員の意見をよく聞くようにしています。
 介護の世界に飛び込んで、いま当法人の中核となってくれている職員にはとても感謝しています。今後も当法人では女性管理職は増えていくと思います。当法人を選んでくれた職員が長く働き続けることができる職場を目指したいと思います。

従業員の声 制度利用者の声画像

後輩たちのために道を作っていきたい

鳥取市介護老人保健施設やすらぎ 施設長
以後 樹子さん(右)
河原あすなろ 施設長
井殿 修子さん(左)

私がいることで、誰かの夢や目標のきっかけになれたら(以後さん)

 2016年から施設長を務め、現在は職員約90人を取りまとめています。施設長への昇格の打診は、当時の施設長で上司であった濱﨑理事長から受けました。当法人はもともと女性の多い職場ではありましたが、管理職は男性がなるものというイメージがあったため、打診を受けた際は自分に務まるのだろうかと不安が大きかったです。ただ、濱﨑理事長と約2年間一緒に仕事をしたことで、女性の施設長のイメージがわき、自分もやってみようと思うことができました。
 私は入職以来、介護を専門としてきたため、経営や運営側の視点を持つためには当法人の階層別研修が役立っています。自身のキャリアのため、外部研修を受講することもあります。当法人では、施設長など社会福祉士等の有資格者が持ち回りで厚生労働省の介護労働安定センターの講師を務めており、私も講師として当法人内外の次の世代の育成に力を入れています。介護は大変な仕事ではありますが、知識や技術だけでなく心持ちも伝えることで、私が感じているやりがいを知ってもらい、一人でも多くの方が介護の世界に入って長く続けてほしいと思っています。
 女性職員の中には、管理職になる自信がない、打診を受けても一歩踏み出せずにいるという方もいるかもしれませんが、女性の施設長である私がいることで、私の仕事や働き方が彼女たちの夢や目標のきっかけになるように今後も仕事を続けていきたいです。

次は私が誰かの頼もしい存在になりたい(井殿さん)

 以後さんとは同期で入職し、以来お互いに支えあってきました。私は2021年に施設長になりましたが、その際も施設長の先輩として以後さんは一番身近で頼りになる存在でした。主任介護士に昇格して後輩をまとめていく立場になり、その後次長として施設長の近くで仕事をしてきましたが、打診があった際は自身がこんなに早く施設長になるとは考えていませんでした。これまで男性施設長のもとで仕事をしてきたので不安ではあったものの、女性の施設長の先輩が身近にいたこと、また、生活相談員は男性が多い中、私が現在施設長を務めている河原あすなろの生活相談員は入所施設で唯一の女性であったことから、「女性でも頑張ればできる」と前向きに考え、引き受けました。
 施設長になったばかりのため、当法人の推薦で全国社会福祉協議会の福祉施設長講座を受講させてもらい、施設の運営や経営について学んでいます。全国の特別養護老人ホームや保育所、障がい児施設などの施設長が参加しており、グループワークもあるので、介護以外の仕事を知ることができてとても勉強になっています。今は地域連携について学んでいるので、当法人や施設でどのようなことができるか考えていきたいと思います。
 以後さんが施設長になったとき、「私たち女性が施設長になれるように私が道を作るから」と言ってくれたことをよく覚えています。私も後に続く後輩のために、私のように頑張りたいと思ってもらえる、頼もしい存在になりたいと思います。

(データの取材時点:2021年11月)

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