女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2020年度

レンゴー株式会社 (製造業)

手探り状態からスタート時間をかけて対話し、着実な成果を導いた

認定マーク

企業プロフィール

設立
1920(創業1909)年
本社所在地
大阪府大阪市北区
事業内容
段ボール、紙器その他紙加工品、板紙、軟包装の製造・販売ほか
従業員数
4,042人(うち女性454人)
企業認定・表彰等
くるみん認定、プラチナくるみん認定、えるぼし(認定段階3)

取組内容

仕事と育児の両立支援男性育児参画女性採用拡大女性職域拡大女性管理職登用

特徴的な制度・取組など

  • 女性活躍推進室を人事部に設置
  • 全社や職場、個別の課題や問題点を掘り下げ、さらにイキイキと働くための育成支援・環境整備につなげることを目的に、女性従業員にヒアリングを実施
  • 上司(主に男性)の意識改革や、男性の育児休業の取得促進にも取り組む ほか

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インタビュー

  • 人事部長代理 兼
    女性活躍推進室長
    伊藤 嘉寿代さん

取組のきっかけ・経緯
専門部署として女性活躍推進室を設置

 レンゴー株式会社は、板紙・段ボールを中心とする包装資材を製造・販売するリーディングカンパニーです。1909年に日本で初めて段ボールを世に送り出して以来、優れたパッケージング(包装)を提供することにより、商品の価値を高め、社会に貢献し続けてきました。
当社では、これまで、両立支援制度の整備に積極的に取り組み、その効果もあって出産後も継続就業する女性は増えてきましたが、正社員女性比率は1割に満たず、女性活躍が進んでいる状態とはいえませんでした。
 そこで2014年4月、トップメッセージを発信して、女性の活躍を当社の成長戦略の重要な柱の一つと位置づけ、人事部に女性活躍推進室を新設しました。

具体的な制度の内容
女性従業員にヒアリングし課題を抽出

・現状把握
 まずは、当社の男女間の人数比率や平均勤続年数の差などのデータ分析を行うほか、先進企業の事例を研究しました。あわせて、さらに活き活きと働くための育成支援・環境整備につなげることを目的に、約150人の女性従業員一人ひとりにヒアリングを行いました。その結果、次のような課題が明確になりました。
 1. 性別役割分担意識が根強く、男女により業務経験や配置部署が偏っている。
 2. 上司による一方的または過度な配慮が、女性のモチベーション低下を招いている。
 3. ロールモデルが見当たらないことが、キャリアを描きにくい原因の一つとなっている。
 4. 出産後復帰しても、これまでと同様の働き方で、仕事と家事・育児が両立できるか悩んでいる。
 これらを踏まえ、以下のような施策を実施しました。
・女性の積極採用
 「これまで男性がしてきた」「この仕事は女性には難しい」という固定的な性別役割分担意識を打破し、本社・工場を問わず、優秀な女性を積極的に採用していきました。
・女性の職域拡大
 特に女性が少ない営業外勤と製造現場をターゲットとし、モデル工場の設置、女性チームによる環境改善報告書の作成、同職種が集う交流会を実施しました。
・女性の育成
 女性が主体的にチャレンジできるよう、入社10年前後や管理職候補層の女性を対象に、キャリア形成意識向上研修を行いました。また、女性管理職をロールモデルとしてグループ報に掲載し、女性たちのモチベーションアップを図りました。
・意識改革
 日々指導育成を行う上司の役割が重要と認識し、上司(主に男性)に対する意識改革とマネジメント能力強化のための各種研修会を企画・実施しました。
・数値目標の設定
 数値目標を掲げた行動計画を策定し、社内外に周知しました。
 ⑴ 総合職女性採用比率を3割以上
 ⑵ 女性管理職数を倍増(2014年度19名→40名以上)
 ⑶ 営業外勤および製造現場で働く女性(正社員)を倍増
 ⑷ 男性の育児休業取得率を13%以上

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
女性比率が増え、男性の育休取得も急上昇

 2020年3月末現在、女性総合職の採用比率は33.3%(2014年は10%程度)、正社員の女性比率は11.2%(同7.9%)、管理職比率は4.7%(同2.7%)になり、男性の育児休業取得率は67.4%(同7.8%)まで上昇しました。
 男性の育児休業取得促進については、対象となる男性に勧めるだけでは言い出しにくい環境は改善しないため、その上司へ取得奨励の案内文書を送って、「上司の支援・後押し」効果を発揮させています。男性の働き方を見直すきっかけにもなり、長時間労働の是正や女性の活躍推進につながっています。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
従業員の思いを丁寧に聴くこと

 当初は、何から始めれば良いのか戸惑うばかりでしたが、上司の「正解か分からないなら何でもやってみよう、失敗したらやり直せばいい、応援するよ」という一言で、プラス思考に転じて考えるようになりました。
 「管理職にはなりたくない」「女性部下の育て方が分からない」など抵抗が強く、研修参加にも消極的で、理解を得ることは簡単ではありませんでしたが、時間をかけて丁寧に進めることで、現在は、女性活躍推進の考えはかなり浸透したと感じます。制度の設計や数値目標を立てることも大切な取組ですが、ベースとなる方針や信念を持って行動することの重要性を学ぶことができました。

今後の課題・展望
女性だけでなくあらゆる人にとって働きやすい環境を

 女性活躍に関する課題はまだあります。引き続き、個々の能力を最大限に発揮できる企業風土づくりや環境整備に取り組みます。さらに今後は、女性だけでなく、高齢者、障害のある人、外国人など、すべての人が活躍できる環境づくりを考えていかなければなりません。そのためには、会社だけでなく、従業員一人ひとりが「自分ごと」として考え、できることを行動に移すことで、当社の女性活躍推進はさらにレベルアップしていくと考えています。

女性従業員の声 制度利用者の声画像

自らの経験を活かして
後輩たちをサポートしたい

パッケージング部門開発本部
デザイン・マーケティングセンター
マーケティング課長
岡野 香織さん

女性従業員の声 制度利用者の声画像

人事部人事課主任
宮本 亜矢子さん

再雇用、管理職登用を経験して(岡野さん)

 1998年にパッケージデザイナーとして入社、2005年に結婚。当時の自分には仕事と家庭の両立は難しく退職しましたが、縁があって2011年に契約社員で再入社。翌年に正社員となり、2016年4月に管理職に昇進しました。入社当時は、製造業なので女性が少なくて当然と考えていましたが、えるぼしやプラチナくるみんの認定を受ける企業となり、女性活躍に対する意識や取組が劇的に変化したと思います。当社には「従業員こそ企業の財産である」という考えがあり、女性活躍推進もその一環で急速に進んだのだと思います。女性も長く働くには、責任を全うするだけでなく、自分の仕事哲学や情熱を持つことが大切ではないでしょうか。再挑戦のチャンスを与えてくれた会社や上司には感謝しかありません。恩返しの意味でも、自分ができることは全部やり遂げ、若手社員にも経験を伝えてサポートしていきます。

貴重な経験をさせていただき感謝(宮本さん)

 取組が始まった直後は「なぜ女性ばかり活躍せよと言われなければならないのか、活躍していないということか」と戸惑いました。研修に参加しても「どうして女性だけ」と思いましたが、周囲から「こんな機会は今しかない」と言われてハッとしました。会社が女性活躍に力を入れている、目の前にチャンスが広がっている、この時期を逃してはいけない。そう気づくと、前向きな気持ちになり、同年代の女性が活躍する姿も多く見られるようになりました。私は二度の育児休業を経て、今、育児短時間勤務制度や在宅勤務制度などを利用して、仕事と子育てを両立しています。充実した制度も必要ですが、天秤にかけて一方をあきらめるのではなく、その都度バランスを整えることがポイントです。また、職場や同僚の理解とサポートを得るため、情報の共有や業務の効率化を常に意識しています。手本となる先輩女性は社内にたくさんいますが、「自分もロールモデルの一人」と考え、一例として後輩たちに示していきたいと思います。

(データの取材時点:2020年11月)

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