女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集

厚生労働省

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2020年度

株式会社 茨城新聞社 (情報通信業)

解決法はあると信じ固定概念を覆し改革を進めていく

認定マーク

企業プロフィール

設立
1891年
本社所在地
茨城県水戸市
事業内容
日刊新聞発行、書籍出版、各種イベント
従業員数
165人(うち女性38人)
企業認定・表彰等
えるぼし(認定段階3)

取組内容

仕事と育児の両立支援仕事と介護の両立支援テレワーク男性育児参画短時間正社員制度女性採用拡大

特徴的な制度・取組など

  • リフレッシュデー実施
  • 人事部と各部署の管理職の間で連携をはかりながら労働時間の把握・管理に努めている
  • 勤怠管理システム上で時間外労働が一定基準を超えるとアラートが出るように設定 ほか

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インタビュー

  • 人事部部長
    松本 理佳子さん

取組のきっかけ・経緯
社員の年齢構成、男女比率の偏りを是正

 2015年頃までは、女性の採用のみならず、定期採用自体が少なく、従業員中に占める女性の割合はわずか11%。男女比だけでなく年齢構成にも偏りがあり、会社の将来を考えるとこの偏りを是正する必要がありました。そこで、定期的な採用を実施し、積極的に女性を採用するよう方針転換しました。応募者は男女ほぼ半々でしたが、優秀な女性が多く、特に女性を積極的に採用しなくても、採用試験の結果、女性の採用がここ数年は多くなっています。2019年現在では、正社員の女性比率は23%、契約による嘱託社員では48%を女性が占めるようになりました。

具体的な制度の内容
ワークライフバランス推進委員会が改革を主導

 働き方改革を目的とし、各部署から1名ずつ1年任期のワークライフバランス推進委員を任命して、働く環境の見直し、問題の抽出・改善案の提言等を行いました。そのうちのいくつかが実現しました。
・時差出勤制度
 産休や育児・介護休業のほか、復帰後、子どもが3歳までは、法定の短時間勤務以外に時差出勤を選択できる制度を設けました。子どもの看護休暇は子ども1人につき5日、2人の場合は10日間付与しています。
・正社員登用
 当社には、嘱託社員として長く働く女性が少なくありません。そこで2019年から、登用試験に合格した者は正社員になれる正社員登用制度を設置しました。これにより初年度には7名が正社員に登用されました。
・長時間労働の是正
 勤怠管理システムを導入し、部署ごとの労働時間を見える化。時間外労働が一定基準を超えるとアラートが出るように設定しました。
・リフレッシュデー
 週1回のノー残業デーを「リフレッシュデー」とし、長時間労働是正の解決法の一つとして実施しました。帰りづらい雰囲気を払拭するため、ポスターなども制作し全社に周知徹底を図りました。
・テレワークの開始
 今年より導入。当初は「新聞社の業務には合わない」と強い反発がありましたが、新型コロナウイルスにより急速に普及しました。

取組の成果・取組を進めたことによる効果等
労働環境を改善しようという意識が高まった

 当社は残業や休日出勤が当たり前の風潮がありましたが、勤怠管理システムやリフレッシュデーの導入により、少しずつ「長時間労働はよくない」という意識が広がってきたと感じます。
 テレワークは、セキュリティ対策などを講じた上で導入。強い反発もありましたが、実際にやってみると、業務によっては、「テレワークも可能」「むしろテレワークのほうが効率的な場合もある」という声が多く挙がっています。コロナ後もある程度定着するのではと予測しています。

取組を進めるにあたっての工夫・苦労
「改革は無理」という強い先入観を根気強く払拭

 新聞社という業界自体、長時間労働が当たり前という意識が強く、ノー残業デーや、休日出勤の禁止、テレワークなどの取組に対し「絶対に不可能」という強い反応をする人がほとんどでした。これを変えるには、学生に選ばれる職場になるためには長時間労働の是正が不可欠であることや、長時間労働による心身への悪影響などを地道に説くことが必要でした。
 業界的に深夜業務がある、休日が取りづらいという事情はありますが、「だから無理」ではなく、「必ず解決できる」と信じて工夫していくことが大切だと考えています。
 テレワークがよい事例となりました。コロナという不測の事態により、強い反発がありながらも導入。実際にやってみたことで、テレワークでもできる仕事、できない仕事、むしろテレワークのほうが向いている仕事が明らかになり、普及の可能性が見えてきました。
 男性の育児休業についても、現在は取得しないのが当たり前の文化があり、「取りたくても言いづらい」という状況です。しかしこれも、何か突破口があれば一気に広がるのではと期待しています。

今後の課題・展望
業界特有の課題の解決にも取り組んでいく

 2017年より、えるぼし認定され女性の応募者が増えたと実感しています。女性が増えれば、女性が働きやすい環境づくりに真剣に取り組まざるを得ません。実際、当社で両立支援の施策が広がったのも、女性社員が増えてきてからです。それまでは、対象者がほとんどいないため、その必要性が論じられることすらありませんでした。
 女性が働きやすい環境は男性にとっても働きやすいはずです。女性の数が増えることで改革に弾みがつくのではと期待しています。
 男性の育児休業取得も増やし、男性の育児参加が当たり前という職場にしていきたい。また、育児支援についてはある程度成果が出てきましたが、介護に関する取組が遅れているので、働きながら安心して介護もできる環境を整えたい。女性管理職の登用については、まだまだこれからです。さらに、業務が夜型になりがち、取材先の都合によって休日出勤を避けられないなど、新聞社という業種がら避けられない問題についても、あきらめずに考えていかなければ、子育てや介護と両立しやすい環境は実現できません。課題は山積ですが、一歩一歩前進していきたいと考えています。

女性従業員の声 制度利用者の声画像

在宅勤務でも大丈夫
出産でキャリアを
あきらめないでと伝えたい

編集局
デジタル編集室室員
安ケ平 絵梨さん

育休後、テレワークを利用して復帰

 新聞記者に憧れて当社に入社しました。現在入社6年目になります。入社5年目に妊娠。当時、夜勤のある整理部に勤務していましたが、上司にかけあって、夜勤の中でも深夜作業のない早番のシフトに変更していただきました。
 昨年、女児を出産。育休を取得しましたが、保育園の都合で、半年で復帰。以前のように夜勤のある整理部には戻れないため、ちょうど今年からスタートしたテレワーク(在宅勤務)ができないかと人事部に相談したところ、デジタル編集室なら在宅勤務ができそうだということで、週4日の在宅勤務と週1日の出社、短時間勤務制度も利用して、仕事を再開しました。在宅勤務のおかげで、休憩時間に家の掃除や食事の下ごしらえなどちょっとした家事を片付けることができ、保育園のお迎えの後に家事に追われるということなく子どもと向き合えるのは大変助かっています。

出産や育児はキャリアの妨げではない

 ニュースの速報性が重視される新聞社という業種で、在宅勤務の私が果たして務まるのだろうか、子育てをしながらどこまで仕事をがんばれるのかと不安がありました。しかし実際には、電話やメール、チャットなどを駆使すれば会社との連絡業務も取材も支障なくこなせることがわかりました。
 また、ネットニュースの読者の多くは女性だということがわかり、そういう方たちに響くニュースを書くには自分の子育て経験も生かせると考えるようになりました。
 出産や育児がキャリアの妨げになるという意識ではなく、それも一つの貴重な体験であって、視野を広げる出来事の一つだと捉えることができれば、多くの女性たちが安心して育休を取得でき、復帰後も仕事と育児の両立を楽しめるのではと思います。
 私の経験が、多少でも会社の役に立ち、「在宅だからできない」「子育て中だから能力を発揮できない」という不安の払拭につながれば嬉しいですね。女性たちが出産でキャリアをあきらめなくていいという風潮を広げていきたいと思います。

(データの取材時点:2020年10月)

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